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がんと闘わない生き方(4)治療法は「自分で決める」感覚が効果

がんと闘わない生き方(4)治療法は「自分で決める」感覚が効果

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 <要約>
 乳がん患者333名のアンケートを統計的に処理したところ、治療法を自分で決めてきたという感覚、自分で決めることができるという感覚(決定コントロール感)が強い人ほど心理的回復の度合いが高いという大変明確な結果が出た。決定コントロール感を高めるのは、医師との良好な関係、治療決定への積極的な参加であり、それらのもとになるのは自分は自分にとって必要なことができるという自己への信頼感(自己効力感)であるという結論が得られた。

 また、治療法選択の機会があった患者はそうでなかった患者よりも、医師との関係、治療決定への参加、決定コントロール感のすべてが統計的に明確に高く、心理的回復の度合いも高いという結果であった。欧米の先行研究では治療法の選択肢を提示すること自体が患者のQOL(人生の質)を高めるという結果も出ており、治療法を患者が自己決定することの意義はQOLの点からも明らかである。

 現在、治療法を患者が自己決定できるかどうかは患者自身の資質や努力によるところが大きい状況だが、今後、患者に治療決定への参加を促す教育を行う医療コンサルテーション(医療相談の場)などが求められる。

<問題>
 近年、がん患者にとってがんと診断された後に、いかに質の高い人生を送ることができるかが切実な問題となってきた。しかしわが国のがん治療においては、告知を初めとするインフォームド・コンセント欠如の問題が大きい。また、がん患者のQOLについての研究も遅れている。欧米の先行研究においては、自己効力感、治療決定における決定コントロール感が患者のQOLを高めることが証明されている。

<研究1>乳がんからの心理的回復モデルの提示

1.目的
(1)乳がん患者における自己効力感、決定コントロール感、社会的支援、心理的回復の関連を明らかにする。

(2)決定コントロール感と、治療決定への参加、医師との関係の関連を明らかにする。
2.方法
(1)質問紙の作成と構成
 8月末、K病院外来で乳がん患者29名に自由記述式準備アンケートに回答してもらい、それをまとめて18項目を作成した。それらに医師との関係、自己効力感、決定コントロール感、不安感、社会的支援などを測る項目を加え、予備調査用質問紙を作成し、10月初め、再び外来で協力を依頼し、50名に回答してもらった。その結果と先行研究を参考に95項目からなる本調査用質問紙を作成した。患者の自由記述により、「心理的回復」は更に「がん体験による成長」へと高められていることがわかったので、この研究では「がん体験による成長」「死の受容」を「心理的回復」「QOL」として扱った。

(2)対象と調査方法
・K病院外来で診察を待っている患者に協力を依頼した(120名)。
・乳がん患者会“ソレイユ”を通じて会員に協力を依頼した(135名)。
・ホームページを作成し、そこにアンケートを載せて協力を依頼した(51名)。
・知人などに協力を依頼した(27名)。        計333名

(3)統計的処理
 95項目から不適切な項目を除き、次の9つの要素を取り出し、要素ごとに項目を分類した。

1.決定コントロール感
2.医師との関係
3.治療決定への参加
4.人生を前向きに考えて楽しむ姿勢
5.コーピング(対処能力)・コントロール感
6.社会的支援
7.がん体験による成長
8.死の受容
9.不安・ネガティヴ(否定的感情)
それぞれの要素に属する項目の得点を合計して統計的処理を行った。

3.結果

(1)自己効力感(4、5)は治療決定への参加や医師との関係、決定コントロール感に影響を与え、がん体験による成長、死の受容にも役立っていた。医師との良好な関係と治療決定への積極的な参加は決定コントロール感を高めていた。決定コントロール感は、がんを前向きに捉え、死の受容を助け、がん体験を成長の糧にすることに影響を与えた。また、自己効力感の高い患者は社会的支援を求める度合いが強く、社会的支援が治療決定への積極的な参加、決定コントロール感を高め、それが心理的回復に影響を及ぼしていることが示唆された。

 不安感が高いと自己効力感が低く、医師との関係、治療決定への参加、決定コントロール感にもマイナスの影響を与えていた。

(2)治療法選択の機会の有無によってデータを2群に分け、統計的に処理した結果、治療法選択の機会の有無は「決定コントロール感」「医師との関係」「治療決定への参加」「人生を前向きに考えて楽しむ姿勢」「がん体験による成長」に影響を及ぼすことが証明された。

(3)“パス解析”という統計処理を行った結果、「人生を前向きに考えて楽しむ姿勢」「コーピング(対処能力)・コントロール感」は、「医師との関係」「治療決定への参加」「決定コントロール感」「がん体験による成長」「死の受容」に影響を与えることが示された。「医師との関係」「治療決定への参加」は「決定コントロール感」「がん体験による成長」「死の受容」に影響を与え、「決定コントロール感」は「がん体験による成長」「死の受容」に影響を与えていた。乳がんからの心理的回復のためには自己効力感と決定コントロール感が重要な要素となっていることが証明され、このパス解析の図を「乳がんからの心理的回復モデル」として提示した。

<研究2>乳がんからの心理的回復に関する事例研究

1.目的
 「研究1」で提示した心理的回復モデルに即し、現実に患者たちがどのように心理的に回復していったのかを事例研究によって明らかにする。

2.方法
 乳がん患者5名に半構成的面接(インタビューの内容を半分はこちらで用意している面接のこと。後の半分は相手の話によって内容が変化してくる)を行い、内容をテープに録音、テープ起しをしてまとめた。

3.結果と考察
 この5名の患者は、個人差はあるがそれぞれが「乳がんからの心理的回復モデル」に沿った回復をしている。がんと診断されて、その時はショックを受けても、時期は人によって違うが自分から情報を求め、知識を得、納得のいく医師を選び、医師と相談しながら自分で治療法を決めている。その結果、がんになったことはよかったとまでは言えないが、自分の人生を見つめなおすよい機会となり、楽に生きられるようになったという。これからは自分の好きなことをして生きていこうと思うようになり、がんになったことで心が解放されていることがわかる。それぞれ、再発・転移の不安はあるが、その時後悔しないように今をせいいっぱい生きようとしていることがわかった。

<研究3>乳房切除術と乳房温存療法のQOLに及ぼす影響

 乳房切除群よりも温存療法群の方が「決定コントロール感」「医師との関係」「治療決定への参加」「死の受容」「人生を前向きに考え楽しむ姿勢」「コーピング(対処能力)・コントロール感」「がん体験による成長」の各要素の合計得点が有意に高かった。欧米の先行研究では乳房切除術と乳房温存療法の術後のQOLの差は、ボディイメージなど性的なもの以外は証明されていない。それは欧米ではインフォームド・コンセントが普及しており、術式による決定コントロール感に差がなく、QOLに影響を与える要素としては決定コントロール感が最も重要であるためと考えられる。それに対してこの研究で差が出たのは、わが国においてはインフォームド・コンセントが普及しておらず、乳房切除群では一般的に治療法選択の機会が少ないため、決定コントロール感が低く、それがQOLに影響しているのではないかと考えられる(乳房温存療法を受けた患者のうち、治療法選択の機会がなかったという者は5%であるのに対し、切除術では44.5%であった)。この結果からは治療法の選択肢を提示することの重要性が示唆された。

<総合的考察と今後の課題>

 乳がんからの心理的回復のための重要な要因は、自己効力感と決定コントロール感であることが証明された。この研究は乳がん患者の心理的回復を越えて「がん体験による成長」までを扱った。それができたのは意識の高い被験者が集まっていたためと思われる。

 この研究では自己効力感は個人の資質による部分が大きいと捉えた。また、がんを契機として成長した患者は、そのことによって自己効力感をさらに高めたと考えるのが自然である。ゆえに「乳がんからの心理的回復モデル」の図(Fig.1)の矢印は「がん体験による成長」「死の受容」から「人生を前向きに考え楽しむ姿勢」「コーピング(対処能力)・コントロール感」へも向けられ、矢印は循環するものとなるであろう。今後、自己効力感を高める要素の研究が課題となる。

 現在は医療者からの情報開示が限られているので、情報を得るためには患者ひとりひとりの努力が求められる状況であるが、それを解決する方法として医療コンサルテーションが考えられる。医療コンサルテーションの目的の一つは、患者が医療者と話すためのコミュニケーションスキル(技術)を教えると同時に、乳がんの知識、患者の状態と治療の選択肢について教育すること、二つ目は医療者が患者の意見や選択を聞き、それをサポートし勇気づけること、患者中心のパートナーシップを築き上げることである。このような医療コンサルテーションがあれば、個人の資質によらず、患者全員が乳がん治療の知識を得、治療法を自分で決めていけるようになる。そうすれば患者の決定コントロール感が高まり、心理的回復につながるであろう。その他、心理的回復のための社会的支援と心理的ケアに関する研究などが今後の課題である。

(2000年度筑波大学教育研究科カウンセリング専攻修士論文要約)
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by lumokurago | 2009-04-04 13:59 | がんと闘わない生き方
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