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『戦争詐欺師』の感想

『戦争詐欺師』の感想
健全なジャーナリスト精神が暴いた対イラク戦開幕の真実


菅原出さんの本の書評です。骨太なジャーナリストです。

*****

『戦争詐欺師』の感想_c0006568_1184931.jpg
 大義名分とされた大量破壊兵器は見つからず、占領後の治安安定もままならず、泥沼化したイラク戦争。その裏にはワシントンのすさまじい内部抗争とあらゆる種類の欲望による暗躍があった。それをイラク戦争開始6年目にして、当事者がここまで生々しく語っている。帯にあるとおり、まさに「驚愕のノンフィクション」である。

 CIAは正しい情報をつかみ、優れたインテリジェンスを提供したが、ネオコンと呼ばれるチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官を中心とするイラク戦争開戦派は、元々、CIAと対立していたから、初めからから聞く耳を持たず、都合のよい情報を無理にでも作り出そうとした。熾烈な内部抗争と飛び交う情報の狭間で暗躍する「戦争詐欺師」たち、ひと山当てようとするペテン師や似非ジャーナリストたち。

 戦略家たちは根拠のない情報で大統領演説を塗り固め、一流メディアを踊らせ、米国民・世界を誘導していく。それだけではなく、政府高官自ら「真実」だと思い込んでいた偽情報も多かったのである。

 2003年2月5日の国連安全保障理事会で、パウエル米国務長官は「確かな情報源によって裏付けられている」と演説。だが、イラクの「移動式生物兵器工場」は、1人のペテン師による真っ赤なウソであった。彼の「尋問や分析作業にかかわったあらゆるレベルの関係者の個人的野心、嫉妬心や思いこみ、組織同士の対抗意識や度重なるヒューマン・エラーが、単なるペテン師のウソを、イラク攻撃を正当化する第一級のインテリジェンスの一つに育て上げてしまったのである」。

 結局、開戦派は「戦争したい」という気持ちがまずあったため、諸々の情報や情勢を客観的に認識できず、すべてをその方向に向けて収れんしていったとしか考えられない。しかし、誤ったインテリジェンスに基づく戦争及び戦後処理は大失敗だった。それを認め、方向転換してからは、開戦に反対した国務省とCIAが力を得、それが現在のオバマ政権に引き継がれている。

 イラクの人々や子どもたちは、こんなアメリカ政府内の抗争の犠牲になったのだと思うと、新たな怒りが湧いてくるが、一方、自らの誤りを率直に語る政府高官や入り組んだ複雑な情報を突き止めて公にするジャーナリストが存在するアメリカの健全な精神を見ると、日本政府や日本のジャーナリストの質の悪さ、程度の低さは救いがたい。

 「事実は小説より奇なり」。本書の題名となっている「戦争詐欺師」であり「アメリカを戦争に引き込んだ男」と呼ばれる亡命イラク人、アフマド・チャラビについては、あまりに複雑怪奇なため触れることができなかった。読み物としても第1級の、詳細に調べ、取材して書かれた驚愕すべきイラク戦争の真実をぜひ多くのみなさまに読んでいただきたい。同じ著者の『外注される戦争 民間軍事会社の正体』(草思社)も推薦する。
 

by lumokurago | 2009-05-16 19:53 | JANJAN記事
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