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『がんサポート』批判 近藤誠医師に聞く その1

 私の本『乳がん 後悔しない治療』の書評を載せてくれた『がんサポート』という雑誌を出版社が送ってくれました。たまたま乳がん特集だったため、読んでみました。すると疑問がいっぱいあったので、近藤誠医師に質問しました。最初の「腋窩廓清について」が少し専門的ですが、あとの方はおもしろいですよ。2回に分けて報告します。

① 腋窩廓清について

渡辺:以前の本に、「乳がんは腋窩(腋の下の)リンパ節を取っても生存率が上がらないことは、1985年までに証明されている」(近藤)、「乳がんの腋窩リンパ節廓清には局所コントロール以上の意義がほぼない」(注:生命を奪う遠隔転移を減らすことはない=腋窩廓清を行なっても生存率を上げることはない)(川端英孝・虎の門病院乳腺内分泌外科部長)という記述があります。ところが川端さんは虎の門病院でセンチネルリンパ節陽性であれば廓清しています。(センチネルチンパ節陽性:センチネルリンパ節は見張り番リンパとも言い、がん細胞が最初に流れていくと考えられているリンパ節で、これだけを切除しがん細胞があれば、他のリンパ節にも転移している可能性があるとして廓清する=リンパ節を根こそぎ取ってしまう。そうするとリンパ浮腫などの後遺症がでる恐れがある)。

 『ガンサポート』によれば「センチネルリンパ節を切除するだけで、腋窩廓清と同様の良好な局所コントロールが得られ、生存期間も同等であった」とのこと(米国臨床腫瘍学会)。1985年に証明されたことをなぜまたいまごろやっているのですか?

近藤:それは「向こうに聞いてくれ」という話だけど。1985年、乳房切除術のなかでいろんな方式を比べるときに、リンパ節を切除するのとしないのとを比べて、そこで切除しなくてもいいという結果がでていたから、当然センチネルリンパ節生検をやっても(生存率が)変わらないということは予想できたことなんだ。それでもそういう実験をやるっていうのはね、医者にはいろんな人たちがいるからね。結局改めてセンチネルリンパ節生検についてそういう実験をやらないと納得しない人たちもいるんだ。それが大きい。論理的操作が下手で類推ができない。昔のくじ引き試験結果を、方法としては新しいセンチネルリンパ節生検に踏襲して考えることができないということかな。

渡辺:私は完全な素人ですが、センチネルリンパ節を切除するだけで同等の成績ということは、そのセンチネルリンパ節自体を切除しなくても同じなんじゃないかと思うんですが・・・。

近藤:ぼくもそう思っているよ。ただそこを切除しないと将来でてくる可能性が少しある。けれどそのとき切除すれば成績は変わらないからね。将来的にいっさい治療しないということは意味しないんだよね。

渡辺:なんでみんなはまだ廓清をやってるんですか? 後遺症のことを考えたらとっくにやめるべきですが。

近藤:推測すれば惰性ね。しみついたことは死ぬまで治らない傾向があるんだな。医者も人間もそうだけどね、いったん思いこむとなかなか変えにくいんだよ。

渡辺:(局所コントロールの意味しかないと言った)川端先生もやっていますが・・・。

近藤:川端はね、変節漢だから。いろんな面で。

② UFT(経口抗がん剤で効果が証明されていない)とCMF(乳がんに使われる古典的抗がん剤療法・現在はもっと強い薬が使われることが多い)が同等という比較試験の結果が出たというのは?

近藤:それはね、その試験結果がでたというのは、ずいぶん前の話だけどね。これは再発患者に対する使用法でね、アメリカでくじ引き試験をやったんだ。その同等っていう結果が出るのも予想できたことなんだ。再発患者にCMFを使っても使わなくても生存率は同じだからね。

渡辺:もともとCMFも効かないっていうこと? (UFTもCMFも効かないから同等という結果が出た)

近藤:そう。

渡辺:でもこの雑誌で報告されているのは術後補助療法です。

近藤:その試験については知らない。術後補助療法も(UFTもCMFも両方とも)もともと意味がないのね。

渡辺:だから結果が一緒になっちゃったってこと?

近藤:うん。これは今年でたばっかりだから知らなくても許されるかな。(雑誌のそのページを見ながら)ちょっとこのページ、コピーしてくれない? (と看護師さんに)

 術後補助療法でもリンパ節転移がない人、臓器転移してる率が10%、20%という人には(抗がん剤は)むしろやめておけと言ってる。効かないはずだから。全身転移確率が40%50%だったらどうかだけど、よく考えてみれば転移があったという場合も、それは微小転移というけど、微小転移といってもがん細胞が10万個100万個あればやっぱり治らないからね。そうするとあきらかな転移患者に抗がん剤を使った場合に、抗がん剤で成績が改善しないから微小転移でも成績は改善しないと考える。そうすると補助療法も効かないということになる。だからこれまでの試験結果というのはうそがありそうだなということになる。

渡辺:CMFが効いてたっていう試験結果にですね。

近藤:うん。

渡辺:それに関連してですけど、なんで普通の医者は抗がん剤をどんどん使う方向に行って、先生だけ逆方向に行ってるんですか?

近藤:それも「向こうに聞いてくれ」だけど、ぼくは最初日本で一番、乳がんに関してね、補助療法で強い抗がん剤治療をやっていた。1980年代にはインフォームドコンセントがなくてきちっとした抗がん剤ができないから、たぶんぼくのところ以上に抗がん剤治療をきっちりやったところはないと思う(近藤医師は日本ではじめて全員の患者にがんと知らせた。当時はがんと知らせることはタブーで、病名を知らない患者に副作用の強い抗がん剤治療を行なうことはできなかった)。その後自分の抗がん剤治療をやった経験と、データを見直すことによって考えを変えてきた。

 他の人たちは2種類に分けられる。専門家と専門家のいうことを受けて行動する一般の医者たちと。専門家っていうのは、抗がん剤に意味がないということは決して言わないの。

渡辺:仕事がなくなるから? 

近藤:そうそう。意味がなくてもデータを作るの。データを作るっていうのは山ほど論証することができるの。いろんな国の試験でそういうことやってる。あるいは前に話したかな。アレディアとかゾメタのこと(『乳がん 後悔しない治療』参照:データを捏造している)。それともう一つは意味がないという報告は有名医学雑誌に載りにくい。パブリケーションバイアスと言う。雑誌の編集者もそれじゃ(意味がないという試験結果では)おもしろくないよね。とにかく世の中にはこれが有効だという論文があふれている。一般の医者は勉強していないからそれだけを信用して使うことになる。簡単にいうとそういうことだな。

つづく。

by lumokurago | 2010-10-15 19:33 | Dr.K関連記事
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