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福島第1、第2原発を見学して

 「暗川」第1号(1984.9.28)より転載します。『80年代』(野草社)にも掲載されました。

 福島第1、第2原発を見学して

 9月7、8日、「くらし・かえたい連続行動」の一環として企画された原発ツアーに参加した。建設中の第2原発で炉心まで見せてくれるというのである。

 福島第1、第2原子力発電所は、福島県双葉郡にある。第2原発が完成すれば、わずか25Kmの海岸線に第1原発(6基・合計出力496万6千Kw)、第2原発(4基・440万Kw)、広野火力発電所(4基・320万Kw)が建ち並ぶ世界でも例のない原発、火電の過密地帯となる。

 7日、東北自動車道を郡山インターで降りて浪江に向かい、この日は浪江で泊まる。バスの中でNHKで放映されたスリーマイル島原発事故のビデオを観る。インタビューされた科学者が「炉心溶融(メルトダウン)の可能性もあった」と言い(注:当時メルトダウンはなかったとされたが、燃料の45%がメルトダウンしていた)、60万人以上の住民に避難命令を出すかどうかが話し合われ、科学者さえ「何がどうなったのかわからない。今後どうなるのかの予測もつかない」と言ったこの重大事故が、またどこかの原発で起こらないと言い切れるのだろうか。

 夜の地元の原発反対同盟との交流会では、今までの反対運動の概略と共に、巨大開発がもたらす社会への悪影響(激増する交通事故、犯罪、金がすべてという風潮、農村地域コミュニケーションの崩壊他)が報告された。電源三法交付金(発電所を誘致した町などに政府から出るお金=迷惑料)によって、各町にナイター設備付きの野球場まででき、農道も全部舗装されたというが、お金には代えられない大事なものが失われつつあることを感じた。

 また、第1原発1号炉の運転から13年経過した今日、地域の放射能汚染は確実に深刻さを増し、松葉や海産物から検出されたコバルト60が小学校の校庭からも検出されたそうである。それから、被曝労働者が広島、長崎での原爆被爆者と同じような健康障害を引き起こし、何ひとつ補償のないままに使い捨てられていく実態を調査し、まとめたパンフレットが配られた。

 8日、まず第1原発に行く。ここでは原子力発電についての基本的な説明があり、バスで構内を1周した。労働者のための運動場があるのは世界でもここだけなどという説明が白々しくて腹が立つ。

 それから第2原発へ。無数のスイッチや計器類の並ぶ中央捜査室を見、建設中の原子炉の中に入る。なにしろ大きくて、無数の銀色のパイプがはりめぐらされていて、機械だらけで、なにがなんだかわからないので、最新の科学技術とはこういうものかと一瞬思わされてしまう。

 しかし、防波堤の先端から見る景色は、右に目をやれば美しい海岸線なのに、左の方へ目を向けたとたんに、巨大な発電所が傲慢に立ちはだかるのである。私たちに説明してくれた東電の社員は、先日東京で38.1℃を記録した猛暑の日にもクーラーを回す電力を送り続けたと自慢していたが、このように美しい自然を破壊してまでクーラーを回す必要があるのか、私は疑問に思う。

 今回の見学で最もショックだったのは、下請労働者が放射線管理区域から労働を終えて出てきて、下着まで着替えてチェックポイントを通って出ていくところを見たことだった。「まさにこの目で」。年輩の人も多かった。同行したカメラマンの樋口健二さんは「自分の近くにおじいさんがでてきたが息が荒かった。いろいろ質問してみたが『いや、いや』としか答えなかった。口止めされているのだろう」とおっしゃっていた。今までも本で読んでこういう場面があることは知ってはいたが、所詮、自分から遠いできごとにすぎなかった。しかし、彼らをこの目で見てしまったいま、「知らない」ではすまされないと強く思った。

 第2原発には、定期検査のない時でも、毎日2500人の下請労働者が働いているそうだ。定期検査があれば、その数は4500~5000人にふくれあがる。原発は1年運転して定期検査に5~6カ月かかるそうだから、4基もあればいつもどれかは定期検査中ということになる。もちろん数が問題なのではないが、その数の大きさには驚く。彼らも好きで危険な原発で働いているわけではない。70%の人が転職を希望している(『福島原発被曝労働者の実態』による)。しかし、生活のためには危険を承知の上で原発で働かざるを得ないという構造があるのだ。

 チェックポイントのカウンターに立って、下請労働者のチェックをしている人がいた。おそらくあそこまでは東電の社員なのではないだろうか。彼らは毎日、どんな気持ちであのカウンターに立っているのだろう。あんなところで下請労働者をまのあたりにしていては、まともな人間ならノイローゼになるのではないだろうか。原発労働者の自殺のうわさもあるようだが、不思議ではないと思った。

 最後に、私たちを案内してくれた東電のえらい方の人も、東京から単身赴任で来ており、土日には私たちのような見学者も多いから、そうそう家に帰れないともらしていたことをつけ加えておく。彼らに同情しているのではない。原発に賛成であれ反対であれ、また東電の社員であれ下請労働者であれ、みんなが巨大な機構のなかにとり込まれている。

 いま、私の手元に「みどりの中の原子力・東京電力福島第2原子力発電所」という文字の入ったメモ帳とシャープペンシルがある。見学の際もらったものだ。これをみるとどうしようもなく悲しくなってくる。何が悲しいのか。下請労働者に対するあまりにも非人間的な扱い。こちらの質問に対する東電のおえら方ののらりくらりした答弁。「彼らも宮仕えの身だから」という誰かの言葉。自然破壊、放射能汚染、ぐるぐるまわる。

 ほんとに原子力はクリーンなエネルギーだなんて信じている人がいるのだろうか。この国を動かしているおえらい方々はそんなこと信じているわけない。例えばスリーマイル島の事故があってなお、どうしてそんなことを信じていられるだろう。ある程度の危険は承知の上で、ある程度の犠牲は前提として、もっと大きな目的(と思い込んでいる)のためにやっているのだ。それを東電のえらい人(と言ってもこの人たちは我々により近いはず)が「みどりの中の原子力」なんてかなしいキャッチフレーズを考えて人びとをだまそうとする。「彼らも宮仕えの身」か。

 本当のことを言えばクビになる。自分を殺すことでしか生きられない社会(私たちの職場も似たり寄ったりだ)。たたかうことは勇気がいる。だからノイローゼにならないためには妥協して汚れて口をつぐむ。会社の方針は私の方針となる。でも、本当にそれだけなのだろうか。もしかしたら、もともと人を人とも思わぬ人がいるんじゃないかしら。私の解釈はずいぶん甘いのかも。

 私はそれで悲しい。「みどりの中の原子力」となんのいたみもなく言える人が、もしかしているのかと思うと。どうかしている。いまさらこんなことに悲しくなるなんて。ひどい人はずいぶん多いのに。そんなこと、とっくにわかっているはずなのに。どうかしている。

(30歳のときに書きました。あの頃私はほんとうに悲しかったのです)。
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by lumokurago | 2011-03-13 20:04 | 昔のミニコミ誌より
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