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恋文 1 暗川第17号 1987.2.28より
…への便り・その4 S.O. このかん、杉並区児童館の<人員削減~効率化>問題へ向けての第一次<総括>集発行を媒介に便りを受け取ったり、渡辺容子さん発行の『暗川』で未知の方がぼくについて触れてくれている―ということがあって、そうしたひとりひとりに感謝の意味を込めて、それぞれ便りをする必要性を感じていました。 けれども一方、それらが数的に多いのでひとりひとりに便りをするのは大変というだけでなく、そうしたたくさんの便りのそれぞれを共通に貫く根源へ向けて一挙に便りをしてみたら―という思いにかられて、申し訳なさやいく分焦りを感じながらも、すぐには便りをしてきませんでした。 そんななか、先日『暗川』第11号に載ったぼくの文章にも登場している<あきこ>に便りをすることがあって、この便りを<…への便り・その4>としてみんなに届けてみたら、とふと思いました。 正直言ってぼくは“書く”ということは好きでないのですが、<便り>は好きです。もっと言えば好き―というよりも<便り>というあり方にどうしても関心が引き寄せられていってしまうのです。<便り>というのは“書く”という分野のなかで具体的に相手~対象を意識せずには成り立たない特異性があります。それゆえに、つまり当事者であるふたりの間でのみ意味があるという、きわめてちいさな世界でのできごとであるために“書く”という分野ではもちろんのこと、日常生活の世界でも意外に軽んじられています。 でもぼくは<便り>といいう形式は“書く”という内面を追求していくあり方と届けるということによる他者を追求していくあり方とが、切り離せないで重なり合っているところで成り立っているめずらしい領域であると思っています。そうした<便り>のあり方をもっとも切実なところまでつきつめたのが<恋文>だといえます。つまりそこでは、内面を追求する度合いの深さによってこそ、はじめて他者が浮かび上がってくるのであり、また逆に相手~対象を意識することによって内面の追求がうながされています。 ぼくはこうした内面~対象とのあいだを揺れ動く<不安>な世界に、ある切実さをみます。こうした<不安>性は、一種の逃げとしての<不安>に対して、<誕生>に向かい合っているところから発する積極的な<不安>というふうに名づけられるかもしれません。内面それ自体がたいせつなわけではない、また、対象それ自体が意味を持っているわけではない。内面~対象とのあいだを揺れ動く意識のなかからしか何物も生まれ出ることはない――ということであると思います。 このことは内面それ自体をたいせつにしてしまうこと、いまの自分を守ろうとしてしまうこと、対象とのかかわりを何ら疑いを持つことがないこと――などを鋭く撃っていると思います。・・・少なくともぼくはそう思っています。 そこには<誕生>を希求する切実な<声>と、それと共に<誕生>を信じる、あるぬくもりのようなものがぼくには伝わってくるのです。 1986.12.28
by lumokurago
| 2011-04-05 15:20
| 昔のミニコミ誌より
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