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歴史教科書8冊の読み比べ(2005年)

 2005年に歴史教科書8冊を読み比べ、HPに連載していました。興味のある方はどうぞ。

8月31日 (「物語」とは「歴史」なのか?)

1.「古代」の章の「読み物コラム」に「神武天皇の東征伝承」(P.30)「日本の神話」(P.46.47)の二つを取り上げ、計3ページを使っています。その上、神話について調べ学習までさせようとしています。宮坂公夫教育委員は「神話は事実ではないが、当時の人の心などが含まれているので大切」「歴史教科書は読んでいておもしろいものがいい。物語を教えることが大切」(8.4教育委員会  以下、「教育委員会」は略)と述べています。

 では、「物語」は「歴史」なのでしょうか?

 物語とは「文学形態の一。作者の見聞や想像をもとに、人物・事件について語る形式で叙述した散文の文学作品」(大辞泉)

 「歴史の一種」とは書いてありません。物語とは「作者」の主観で書かれたものなのです。宮坂委員は「歴史の事実は一つでも歴史観はさまざまで国の数だけある」 (8.4)と述べていますが、歴史教育で「物語を教えることが大切」なら、歴史観は「国の数」どころか、「物語の作者の数」だけあるのですね!じゃあ、歴史学者たちは何をしていたのでしょうか?あまりにも 失礼な話です。

2.「神話」に3ページも使ってしまい、「中世」が6ページも少なくなっています。中学校の社会科の先生によると「中世」が一番入試に出るそうですよ。納冨教育長は「中世が薄いが検定に通っているので問題はない」 (8.12)と言っています。でも、もし「検定」そのものに問題があるとしたら??大変ですね! 

3.採択の審議の中で議論が集中した「よく戦った」(8.12)という言葉ですが、(このことについては後で詳述します)、こんなところにもあります。「元寇」の項です。「元軍は~日本をおそった。日本側は、略奪と暴行の被害を受け、新奇な兵器にも悩まされた。しかし、鎌倉武士は、これを国難として受けとめ、よく戦った。また、2回とも、元軍は、のちに『神風』とよばれた暴風雨におそわれ、敗退した」 (P.70)

 「国難」に対して「よく戦った」と評価して書かれています。なんか「きみたちも戦争になったらお国のために戦うんだよ」と言われているような気がするのは私の気のせいかしら。それに「神風」って何だっけ??たしか60年位前に聞いたことがあるような・・・。あれ、私、生まれてたっけ?なんか亡霊の言葉みたい。 


9月1日 (「よく戦った」中身と「不敬罪」)

1.きのうの続きで「元寇」の後から見てみると、次のページに「歴史の名場面・蒙古襲来」というコラムがあり、半ページを割いて、「よく戦った」中味を載せている(P.71)。これとそっくりのどっかで見たことある!

えーとえーと、そこまで出てきてるんだけど・・・あっそうだ、「桃太郎」だ。戦時中戦意高揚のために書き換えた「桃太郎」だ。学生時代、児童文学を専攻していたのでその時にいろいろなヴァージョンを読んだのである。何種類も違う「桃太郎」があったけど、「よく戦った」中味の表現がすばらしかった点では全部同じだった。児童文学者も戦時中はそんな仕事をさせられていたのである。いやな時代だったなあ。

 こういう文章が好きなら個人で読めばいいと思う。半ページも使って教科書に載せるっていうのはどうなのかな?やっぱ意図的なんじゃないの?というのはこれひとつじゃなく、「歴史の名場面・日本海海戦」(P.169)もすばらしい文章だからです。こっちは1ページ全部使っている。

2.さて、戻って、次のページは扶桑社版を推薦した教育委員の方々自慢の「人物コラム」(「扶桑社は歴史上のすばらしい人物447人を研究資料として載せているby宮坂委員(8.12))、「源頼朝」だ。「頼朝もいろいろ苦労したんだな」と思わせる「読ませる」文章だが、違和感を覚える部分もあった。ちょっと読んでみよう。

 「1192年、天皇から征夷大将軍に任ぜられ、正式に幕府を開いた。頼朝はあくまでも朝廷をうやまい、その権威によって全国の武士を統率していったのである」。そうですか。しかし、すぐあとに「また、全国に守護、地頭を置き、朝廷をしのぐ勢いを示したが、天皇を重んじる姿勢は変えなかった。彼は、自分の娘を天皇にとつがせることで、朝廷と幕府の安定した関係を築こうとの願いをもっていた。

 頼朝のこうした考え方は、その後の江戸幕府にいたる武家の政治でも、基本的に受けつがれることになった。幕府がどんなに政治的な力をほこっていても、朝廷の権威が失われてしまうことはなかった。武家政治は明治維新まで続いたが、その間、朝廷と幕府の関係はだいたい安定していた」

 頼朝のコラムなのにずいぶん朝廷の記述が多いなあ。全体の四分の一はある。どうして頼朝が「よく戦った」中味をもっとたくさんすばらしく書かずに、朝廷にこんなに費やしたのか、不思議だ。そういえば、他の7社の教科書が「平和」などを取り上げている巻末のページに「昭和天皇」というコラムがあったっけ。そういうわけか・・・(「どういうわけ?」って?それは不敬罪にあたるから言えないのよ) 


9月2日 (「農民の生活」は?)

1.頼朝のコラムの次のページは「読み物コラム」で 、テーマは「武士の生活」です。「一遍上人絵伝」に描かれた「武士の館」の絵が中央に配置され、ていねいな解説がつけられています。ほお、武士はこんな生活だったのか。わかりやすくていいですね。

 それから「鎌倉の文化」のページが2ページあって、時代はいよいよ武士の時代へと突入。たくさんの人が次々と出てくる、人間の権力への欲望は果てしないんだなあ。でも出てくるのは男性ばかり、などと読み進んでいたら、また発見。「このころの室町幕府は朝廷の権限の多くを吸収し、全国的な統一政権としての正確を強めた。しかし、将軍が天皇から任命されてその地位につくという原則に、変更はなかった」(P.78)

 天皇から「征夷大将軍」に任命されるのでしたね。同じページの上の方に書いてあるのでもう知ってますよ。なんか言い訳してるみたい。ページがもったいない。

2.さて、読み進むと「中世の都市と農村の変化」というページとなり、農業の発達、手工業・商業の発達について書かれています。その後「都市と農民の自治」として、裕福な商工業者が「町衆」として自治のしくみをつくっていたこと、農民が寄合を開き、「惣」という自治組織をつくったことなどが書かれています。この後に、農民が武器を取って立ち上がった「土一揆」について触れられています。

 「土一揆」が要求したことは簡単に書かれていますが、なぜそれを要求したのかについては何も書かれていません。どんな状況で、どんな気持ちで農民は武器を取ったのか?「当時の人の心を知ることが大切」(by宮坂委員)なはずなのに、これでは何もわかりません。農民が武器を取るなんてよほどのことがあったに違いない。いったい何があったのか?知りたいですね。

 武士の生活はよくわかったけれど、農民の生活は何もわかりませんでした。農民にも1ページ使ってほしかったな。だってもしこの時代に生きていたら、私たちのほとんどは「農民」なのですもの。この教科書をつくった人はその時代では「武士」だったのかな? だから農民の気持ちは無視して平気なんだね。
 

9月3日 (「自治」とは何か?)

1.さて、次は「室町の文化」が2ページ、「課題学習」の「博物館を利用しようー畳について調べてみる」がやはり2ページです。とにかく「内乱」についてでないので、ほっとしますね。

2.はい、またまた内乱です。「応仁の乱」です。応仁の乱をきっかけに、将軍の権威はおとろえ、身分の下の者が実力で上の者をたおす「下克上」の風潮が見られるようになったと書かれています。その次、「土侍らが守護を追放し8年間の自治を行う、山城国一揆がおこった」「浄土真宗の信徒らが守護大名の支配に反抗して一向一揆をおこし、信徒らによる自治は約100年続いた」とあります。

 すごい!「自治」が100年間も続いたのか!現在、「住民自治」という言葉があります。「自治」を辞書で引くと、「1.自分たちのことを自分たちで処理すること 2.人民が国の機関によらず自らの手で行政を行うこと。特に、地域団体による地方自治をさすことが多い」(大辞林)

 いつも大人たちは子どもたちに「自分のことは自分でしなさい」と言っていますね。また、「自由には責任が伴うのだ」とも。「自治」ってこのことなんだ。そして杉並区は「地方自治体」です。つまり「杉並区のことは区民が決める」だよね?

 あれ?とここで不思議なことが一つ。この扶桑社版歴史教科書を採択したのは誰だっけ?教育委員の5人だった。たった5人。しかも賛成したのはその中の3人。確かに「多数決」だけど、なんか変。区民の意見を 取り入れてくれたのでしたかね?

 「取り入れた」とは言わず、「参考にした」(by和田庶務課長8.26文教委員会)と言っていました。では「参考」とは何か?

 またまた辞書で調べると、「考えをまとめたり、物事を決める際に、手がかりや助けとすること。また、その材料」(大辞林」。

 ふーん、「手がかりや助けにする」っていう意味には、「無視する」っていう意味もあったんだ。初めて知った。

 ところで、納冨教育長が興味深い発言をしています。「事実の羅列では話にならない。先人たちがなぜそうしたのか、どういう背景があったのかが・・・中略・・・論理的に書かれていてほしい。・・・中略・・・扶桑社は記述が弁証法的でわかりやすい」(8.4)。

 なぜ一揆を起こしたのか、どういう背景があったのか、「自治」の内容はどんなものだったのか?何も書かれていないんですけど・・・
 

9月4日(日)  (「天皇」はたくさん出てくるけど・・・)

1.あ。またありました。戦国大名が出現して、「やがて、力をたくわえた戦国大名の中から、京都にのぼり、天皇の権威をかりて天下を統一しようとする者があらわれた」(P.87) 天皇の権威はすごいですから、ブシといえどもムシできないですね。(これが「しゃれ」ってわかっていただけたら嬉しいな 。ムリですか・・・)。

2.次、「朝鮮と琉球」。朝鮮は日本が長い間苦しめた国だし(身近にいらっしゃる在日コリアの方に聞いてみてください)、琉球(沖縄)は先の戦争で本土決戦を避けるための犠牲にし、戦後もアメリカの基地のほとんどを集中させて(すみません、%は覚えていません)、本土の犠牲にしているところです。そういうところについてどういうふうに記述しているのか、興味があります。でも扶桑社版教科書には書いていないことも多いので、他の7社の教科書と見比べなければ、何を書いていないのかはわかりません。

 昨日、大久保の「第一教科書」という教科書を扱っている書店に行って、他社の教科書を買ってこようとしたのですが、土曜日は休みでした。また、明日行きます。

3.第三章「近世」に入ります。中世は短かったです。24ページでした。今度他社と比べてみますね。

 ここに来て初めて、「ヨーロッパ」が出てきました。「大航海時代」それから「鉄砲の伝来とキリスト教の布教」「南蛮貿易とキリシタン大名」と続きます。(全部で4ページ)

 「当時のヨーロッパ人は、まるでまんじゅうを二つに割るように地球を分割し、それを自分たちが進出する領土とみなしたのだった」(P.91) ちょっとこの場にそぐわない比ゆが出てきました。読み物としておもしろくするためなのでしょうか?

 「日本は世界一の鉄砲生産国となった。鉄砲の使用は、それまでの戦闘の方法を大きく変えて、全国統一を早めるという効果をもたらした」(P.92)など「鉄砲」について6行書いています。この部分、他社がどう書いているのか、比べてみたいです。

 これらの項の最後に、「この時期から、日本人の東南アジアへの進出も本格化した」とさりげなく、書いています。

 
9月5日 (「自国中心」のはじまり)

 今まで扶桑社版教科書だけを読んで、このコラムを書いてきたのですが、今日、他社4社の教科書を買ってきました。今使っている「帝国書院」、4日の教育委員会でこれに決まりそうだった「大阪書籍」、一度会社がつぶれて新しい会社になった「日本書籍新社」、教科書展示会で公民ともども魅力的だと感じた「清水書院」。4冊も買うなんて「中学校歴史教科書オタク」になってしまった。

 そのおかげで扶桑社だけ見ていたらわからなかったことが明らかになりました。始まりからして全然違っていました。

 各社のタイトルを見てみましょう。

帝国書院:第2章(第1章はオリエンテーション) 「古代国家と東アジア」 1節「人類の出現から文明の発生」

1.東アジアにあらわれた人類
人類の誕生から書いてあり、氷河時代、旧石器時代(日本にも触れています)、新石器時代があってから、「最初に日本列島に住み始めた人々」という順番になっています。

2.「東アジアの先進国 中国の文明」を詳しく説明した後、日本の縄文、弥生時代でした。(中国と朝鮮の古代については後で出てきます)。

大阪書籍:(初めは「章」がなく)第1編「原始から古代へ」

1.人類の始まりと文明
人類の誕生から書き起こし、旧石器時代、新石器時代、それから四大文明に触れ、中国の文明について詳しく書いています。中国と朝鮮の古代にも触れてから、

2.で「日本の原始時代」へ入っていきます。

日本書籍新社:第一章「人類の誕生と古代社会」

1.人類の誕生と古代文明
人類の誕生と旧石器時代(「日本の旧石器時代」にも触れています)、それから新石器時代と四大文明、宗教のおこりに触れています。中国文明、古代の中国、朝鮮についてまとめて書かれています。

2.に「日本の国のはじまり」が出てきます。

清水書院:第1編「近代までの日本と世界」 第1章「原始・古代の日本と東アジア」

1.文明のおこり
やはり人類の出現から書き起こし、旧石器時代、新石器時代、四大文明、中国の黄河文明、その後に「日本列島の成立と狩猟・採集の生活」、続けて縄文時代、弥生時代になっています。その後に

2.「東アジアの世界」として中国と朝鮮のことが出てきます。

 いずれの教科書も「人類の始まり」があり、旧石器時代、新石器時代があり、四大文明があって、中国の文明を詳しく述べた後に、日本の縄文、弥生時代に入っていきます。ここで古代の中国、朝鮮にも触れています。会社にもよりますが、中国の文明には2~4ページ使っています。古代の中国、朝鮮については半ページから2ページ使っています。

ところが、

扶桑社:第1章「原始と古代の日本」 1節「日本のあけぼの」

1.日本人はどこから来たか。
初めに「美しい緑の島々があ」り、「それが、これから学習する歴史の舞台となる日本列島である」と書いてあります。

 そもそもこの教科書は日本史だったんですね。中学校の「歴史的分野」では世界史も一緒に学ぶのではなかったのか。

 旧石器時代の後に日本の縄文時代があり、その後に新石器時代です。これと四大文明、中国の文明、3つ合わせて2ページしかありません。古代の中国のことはシルクロードや仏教と合わせて、たった6行でした。その次、弥生時代2ページ。

 おお、疲れてきた。今日は話がつまらないしごちゃごちゃしてきました。

 でも、わかったこと

 他の4社にある「世界の中の日本」という視点が扶桑社にはありません。初めから自国中心(自己中心的)です。

 中国についての記述が少なすぎる。ましてや朝鮮については今日のところではなし。在日コリアの子どもたちもこの教科書で勉強するのです。大半の在日コリアの人たちはそもそもなんで日本に住んでいるのでしたっけ?もしも覚えていたらこんな仕打ちができるでしょうか?

 あー、でも、もう比べるのはやめて、扶桑社だけ読んだ感想にしよう。大変すぎる。でも大切なところは比べますよ。せっかく買ったのだし・・・

by lumokurago | 2011-06-23 15:14 | 中学校歴史教科書8冊の読み比べ
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