暗川  


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オタマジャクシ (戯曲)

オタマジャクシ 1982年頃のもの

   人物  武田(教師)
       野村(母親)
       田中(母親)
       山下(用務員)

   放課後の小学校の教室 野村が入ってくる

野村 先生、どうも。子どもがいつもお世話さまでございます。

武田 ああ、野村さん、ま、こちらにどうぞ。(椅子をすすめる)。

野村 うちの子が何か?

武田 あやちゃんには困ったもんですよ。なぜかいつもボーっとしててですね。私の話なんかろくに聞いてないんじゃないですか。

野村 はあ。

武田 なにしろ、忘れ物が多いです。あの表を見てください。忘れ物の回数の表なんですが、真ん中にひとりだけピョンと出てるのがあるでしょう。あれがあやちゃんです。ああいうふうに表にしてみんなの前に貼りだしたら、本人少しは気にするだろうと思ったのに一向にダメです。宿題も一度もやってきたことがないんですよ。

野村 ええっ、宿題が出ていたのですか?

武田 もちろんですよ。だめですよ、もっとよく監督していただかなくては。宿題だって忘れ物だって本人任せにしておいてはちっともよくなりません。こういうところから落ちこぼれになっていくんですよ。学校で努力することは無論ですが、家庭でももっときびしくしていただかないことには困るんですよ。

野村 どうもすみません。うちはとうちゃんがいないし、私が仕事を持っているので、忙しくてついそのへんは本人に任せきりで・・・。少し時間がある時は、普段かまってやれない分もおしゃべりしたり遊んだりしたいものですから・・・。それに、あやは宿題のことなど何も言わないので、てっきり出ていないものと思っていました。忘れ物もそんなにひどかったなんて。

武田 困りますね。もう少しお子さんの学校生活に関心を持っていただかないと。

野村 はあ。でもうちでは上の子の時もそんなふうで結構なんとかなりましたし、2年生にもなっていちいち忘れ物のことまで言うのもちょっと・・・。それにこういうことは忘れ物をした本人が困って、それで自覚して直そうとするしかないように思いますが・・・。(あまり気にしていない様子)。

 (考える間)

武田 以前私が受け持ったクラスのお母さんに、こういう人がいましたよ。子どもの自主性を育てるため、まず時間割は子どもにそろえさせるんです。そして子どもが寝てからお母さんが点検し、足りない物があれば入れておくんです。名案でしょう?

野村 はあ、

武田 お宅でも実行なさったらいかがですか。

野村 でも・・・。

武田 迷惑するのは私なんですからね。

野村 はい。

武田 それとあやちゃんは自分のこともできないくせに、人の世話ばかりやきたがるのも困ったものです。石井君、ご存じですよね、知恵遅れの子です。あの子が1年生の時からあやちゃんの隣の席で、席替えの時、あやちゃんと離れたくないと泣くんですよ。それで仕方なく今も隣にしていますが、あやちゃんは自分のことをしないで、石井君になんだかんだと世話をやくのです。私としてはまず自分のことをきちんとできるようになってもらいたいんですよ。

野村 先生のおっしゃることもごもっともですけど、友だちの世話をやくのはあやのいいところだと私は思うんです。ボーっとしてるとこも考えようによっては、あくせくと点数とか忘れ物の表のことを気にするよりおおらかでいいと思うんです。私はあやのボーっとしてるとこがまわりの人をほっとさせることもあるんじゃないかと思っているんです。

武田 お母さんがそんなふうだから、あやちゃんがいつまでたってもよくならないんですよ。なんといってもこの世は競争社会ですからね。のんびりしてる暇はありませんよ。

野村 でも・・・あやはボーっとしてますけど、よく気がつくとこもあって、私が帰るまでに洗濯物をたたんでおいてくれたり、上の子と二人で茶碗を洗ってくれたりするんですよ。

武田 それもいいですが、まず自分のことをきちんとできるようになることが先ですよ。それからお宅には毎日のように子どもたちが何人も集まっていますね。お母さんがいらっしゃらないのに、何かあったら大変じゃないですか。何人かの人から苦情が来ていますよ。大人の目の届かないところに集まって悪いことでも覚えたら大変だって。

野村 本当ですか。苦情が来ていたんですか。

  突然、田中が入ってくる

田中 先生、あのオタマジャクシですけど、困るんですよ。

武田 は? 今ちょっと面談中なんですけど。

田中 あ、失礼しました。でも、あの・・・。

野村 私はかまいませんからどうぞ。

田中 すみません。うちは生き物は飼わない主義なんですよ。私は忙しくて面倒をみる暇なんてないし、こどもはほったらかしでしょ。やれエサをやれ、水をかえてやれと小言を言うと、主人がうるさいとおこるし。でも学校から持ってきたものじゃ捨てるわけにもいかないし。オタマジャクシの観察なんて学校でやればいいことじゃないですか。子どもの勉強のことは学校にお任せしてあるんですから。

武田 それは心外ですね。あれは今年からの新しい実践なんですよ。このあたりは東京でも緑の多い方ですが、それでもオタマジャクシなどはもう見ることもありません。うちの学校の子どもたちはオタマジャクシも見ずに育つわけです。それじゃあ理科教育の面からも情操教育の面からも大きなマイナスです。それを一挙に解決するすばらしい実践でしてね。あのオタマジャクシ、どうしたと思います? (得意そうに)

田中 さあ・・・。

野村 どうしたんですか?

武田 この学校に多摩の奥の方から車で通っている先生がいるんです。その先生に、毎朝取れたてのピチピチしたオタマジャクシを運んできてもらっているのです。それを学校の池に放し、子どもたちに自由に採集させるんです。オタマジャクシが住む自然環境の失われてしまった都会の子どもたちに、採集する喜びと観察する喜びを味わわせてやる。どうです、すばらしいでしょう。もちろん子どもたちは大喜びですよ。

野村 (立つ)まあ、そういうわけだったんですか。うちの子は大喜びで、またオタマジャクシを取るんだっていって、今、私と一緒に来たんですよ。本当にいいことをしていただいて・・・。

武田 今、一緒に来たってどういうことですか?

野村 だから、オタマジャクシを取りに。

武田 なんですって! (あわてて窓から外をのぞいて)あっ、いる、いる。まったくなんていうこと! ちょっと、そこの子どもたち! 勝手にオタマジャクシを取ってはいけません! そんなことをすると校長先生に叱られますよ。(野村に)お宅のあやちゃんと石井君です。

野村 でも先生、先生は子どもに「自由に取っていい」っておっしゃったんじゃ・・・。あやはそう言ってましたが。

武田 「自由に」と言ったって、放課後まで勝手に取っていいとは言ってませんよ。そんなことさせたら、池がメチャクチャになってしまいますよ。池の中に入ったり、まわりに植えてある草を踏みつけたり。そんなことさせるわけないでしょう。

野村 はい。(坐る)

武田 「自由に」というのは、授業時間中、担任がついている時に限ってですよ。決まってるじゃないですか。それを自分の都合のいいように拡大解釈して放課後まで勝手に取るなんてお宅のあやちゃんくらいのものですよ。石井にまで知恵をつけて。

野村 はあ、どうも申し訳ありません。

田中 先生方が教育に熱心なことは大変結構でありがたいことなんですけど、それを家庭にまで持ち込まれるとちょっとね、困るんですよ。

武田 (外を気にして退場)

野村 あら、いいことじゃありませんか。カブトムシだってデパートで1匹いくらで買う時代でしょ。そんな時代にとにもかくにも自分の手ですくったオタマジャクシを飼えるんですから。

田中 そうかしら。でも、うちなんか狭いマンションに親子4人で暮らしてるでしょ。オタマジャクシを飼うっていったって大変なのよ。置く場所だってないし、うちは下の子がまだ小さいものだからいつひっくり返すかわからないし。それにオタマジャクシだってかわいそうだわ。あんな小さいビンに入れられて。カエルになったって放す池もないのよ。

野村 そうねえ、でも犬や猫はとても飼えないんだから、せめてオタマジャクシぐらい飼ってやりたいじゃない。それにこのあいだ話題になったでしょ。缶詰入りのメダカ、あんなことするよりずっといいわ。たとえ多摩から持ってきたオタマジャクシでも、自分の手で取れるんだから。

田中 缶詰入りのメダカって?

野村 酸素をたくさん入れた缶詰にメダカを入れて売り出したのよ。2、3日は生きているんですって。

田中 まあひどい。

野村 小さい時からそんなものを見て育った子どもはいったいどんな大人になるのかしらね。なんだかこわくなるわ。

  用務員、入ってくる。いつのまにか、武田、戻っている。

用務 すみません、武田先生。子どもたちがプールに入ってオタマジャクシを取っています。私が注意してもきかないのでお願いします。

武田 なんですって! オタマジャクシはちゃんと池で取らせてやっているのに。ちょっと失礼しますよ。(走り去る)。

野村 (去ろうとする用務員を引きとめて)すみません、プールにはオタマジャクシがいるんですか?

用務 たくさんいますよ。いくら禁止しても子どもたちが取りたがってね。先生方の目を盗んでは柵を乗り越えて入り込むんですよ。

野村 まあ、先生がせっかく苦心して池にオタマジャクシを放しているのに・・・。

用務 そうですけど、なんだか変じゃありませんか。プールにはオタマジャクシがたくさんいるのにそれを取るのは禁止して、わざわざ遠くから運んできて池に放すなんて。私には学校の先生のなさることはどうもよくわからないですよ。今度、ほら、あの校庭の隅に小さい土手みたいになっているところがあるでしょう。子どもたちがすべりおりたりして遊んでいる姿をよく見かけるんですが、あそこを一面の菜の花の咲く土手にするそうなんです。それで私たちが土をならしたりなんだりしているのですが、確かに花いっぱいの学校にはなりますが・・・。校長先生が花が大好きなんですよ。桜の咲く時季には校庭の桜の木がよく見えるように校長室の机の位置を変えるくらいで・・・。まあそれはいいんですが、土手を菜の花畑にしたら子どもたちが遊べなくなってしまいます。

野村 まあ、そんな話があるんですか。

田中 ほら、あのプールと体育館の間に新しく木をたくさん植えて石のベンチなんか置いたところができたでしょう。うちの子なんか、いつもあそこでドッジボールをしてたのに、あれができてからできなくなったってボヤいてたわ。

用務 あそこは武蔵野の雑木林の面影を残すとかで、緑化対策の一環らしいですよ。

野村 武蔵野の雑木林の面影!

田中 そんなあ! どうせならそんな小手先のことしないで、学校の隣にあるあの雑木林を買い取ったらいいじゃない。本物があるんだから。

野村 あそこ、佐藤さんの土地でしょ。この辺の大地主の。すごいわよね、広いのなんのって。

用務 本当ならああいう所を開放して子どもたちを遊ばせてくれればいいんですが・・・。

田中 佐藤さんなんて、駅前と学校の裏のと、二つもマンション持ってるんでしょ。あの林くらいドーンと区に寄付しないかな。

野村 ダメダメ。うちの子がちょっと入ったくらいで大声で怒鳴るんだから。今にまたマンションでも建てるんでしょうよ。

武田 (戻ってくる) どうも失礼しました。

用務 では私はこれで。(去る)

武田 あれほどプールに入ってはいけないと言っているのに、ふとどき者がいましてね。野村さん、そのなかにまたあやちゃんがいましたよ。まったく女の子とも思えませんよ。

野村 申し訳ありません。先生にご迷惑ばかりおかけして。

田中 本当にしょうがないわねえ、ホホホ・・・。

野村 でも先生、うちの子の弁解するわけじゃないんですけど、プールにオタマジャクシがいるなら、どうしてそれを取らせないんですか。プールを開放してそこで取らせれば、わざわざ遠くから運んでくる必要ないんじゃありませんか。(素朴な疑問)

武田 プールを開放するですって! (非難するように)

野村 いけませんか?

武田 いけませんよ。第一、危ないじゃないですか。オタマジャクシに夢中になっているうちにプールに落ちておぼれでもしたらどうするんです。

野村 はあ。

田中 プールの水を子どもの膝ぐらいまで減らしたらどうですか?

武田 それはだめです。あれは防災のために冬でもいっぱいに水を張っておかなければならないのです。

野村 今、思い出しましたけど、私の通っていた小学校では夏が終わるとプールに魚を放して、次の年の夏、プールの大掃除をする前に釣り大会をやっていました。うちに釣りざおのある子はそれを持ってきて本格的に釣るし、私みたいのはそのへんで拾った棒に糸をつけて釣りのまねして・・・。それだけでも楽しみでした。

田中 私の学校ではいかだを組んで、プールで進水式をやりました。山の中の学校だから丸太なんか豊富にあるんです。

野村 やっぱり昔はのどかだったわね。

田中 今は子どもがケガでもしたら責任問題ですもの。先生方も気を遣われて大変でしょう。

野村 でもオタマジャクシぐらい取らせてあげてもいいのでは・・・。

武田 とんでもない。集団生活をしている以上、集団を統率するための規律というものが必要です。プールは泳ぐためにあるのです。それをオタマジャクシを取るために開放したりしては、その規律をくずしてしまうのです。何か一つでもはめをはずすと、子どもたちに気のゆるみができ、際限なくだらしなくなるのです。

野村 でも、プールにオタマジャクシがいれば、入って取りたくなるのが子ども心じゃないでしょうか。

田中 野村さん、あなたがそんなふうに寛大だから、あやちゃんがお転婆になるのよ。

武田 いや、田中さん。お宅のヒロシ君にももう少しケジメというものを教えていただきたいものですね。心にけじめをつける一番の基本は何かわかりますか?

田中 さあ。

武田 あいさつですよ。朝のあいさつ、おはようございます、人になにかしてもらったら、ありがとう、職員室に入る時は、失礼します、謝る時はすみません。略して“オアシス”です。

田中 “オアシス”?

武田 おはようございます、ありがとう、失礼します、すみませんの頭をとって“オアシス”ですよ。あいさつは人間関係の潤滑油、非行防止対策でもあります。あいさつは小さいうちからきちんとしつけなくてはいけません。先月の学校だよりに書いたんですが・・・。

野村 ああ、そう言えば・・・。確か“オアシス運動”・・・。

武田 そうです。「学校に広げようオアシスの輪」(と標語を読む)。提唱者は私です。毎朝、先生方が交代で校門の前に立ち、朝のあいさつ運動を始めたんです。さわやかな「おはようございます」は一日の活力を生み出し、先生と生徒の心のふれあいにもなります。ところが田中君はいつも友だちとふざけながら石なんかけるのに夢中になっていたり、ダンゴ虫をつかまえたといってはあいさつもなしにとびついてきたり、困ったものです。野村さんとこのあやちゃんも同じですよ。

田中 どうも、先生にお世話ばかりかけて困った子です。うちに帰ったらよく言い聞かせますので。

野村 でも先生、そういう時は先生の方から「おはよう」と声をかけてくだされば、あやはちゃんとあいさつを返すと思うんですけど。

武田 野村さん! あいさつというものは目下の者が先にするものですよ。子どもの方からあいさつするのが当たり前です。

野村 はあ。

武田 いいですね。もう繰り返しませんが、今日お話ししたことはこれから十分注意するようにして下さいよ。子どもが非行化してからでは遅いんですからね。野村さん。

野村 はい。

武田 ヒロシ君の方もよろしく。

田中 はい。

武田 では、私はまだ仕事がありますので。

野村 どうもありがとうございました。

田中 これからもよろしくお願いします。

  二人、「失礼します」などと言いながら去る。

武田 まったく、子が子なら親も親だわ。(ひとりごと、仕事にとりかかる)。

用務員、入ってくる。

用務 武田先生、失礼します。今、青木先生から電話がありまして、オタマジャクシを取りにいって、石につまずいて足をねんざして、明日は学校に来られないそうです。オタマジャクシも届けられないからよろしくということです。

武田 なんですって! 困るわねえ。明日は理科のあるクラスが4つもあるのに。先生方もそのつもりでしょうし。どうしよう。(間)

そうだ、いいことがある。山下さん、プールのオタマジャクシをすくって池に移して下さい。プールにはたくさんいるから。

用務 でも先生、プールに入ることは禁止しているのに。

武田 そんなことはかまいません。子どもたちももうみんな帰ったでしょう。

用務 でも・・・。

武田 いいから、私が許可するから早くしてください。

用務 はい。(去る)

武田 これで明日はひとまず安心だわ。青木先生のねんざはどの位悪いのかしら。早くよくなってもらわないと、プールのオタマジャクシじゃすぐ底をついちゃうわ。(仕事に戻る)

 でも、さっきのいかだの話、あれはおもしろいわ。卒業生の共同制作にでもやってみたらどうかしら。今年はうちは理科教育研究指定校だから、「水に浮く乗り物」とかいうテーマでやれば注目を集めるかもしれない。去年は隣の第一小学校が社会化研究指定校で、校庭に竪穴式住居を作って新聞に載ったから、うちの学校も何か目新しいことをしないと。プールに浮かべるということには危険もあるけど、なんといってもユニークだもの。そっちは万全の策をたてて・・・。そうだ、教務主任の伊藤先生、まだ残ってるかしら、早速相談してみよう。

 幕
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by lumokurago | 2011-08-16 17:44 | 昔のミニコミ誌より
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