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元「慰安婦」を侮辱する民間募金構想

 元「慰安婦」を侮辱する民間募金構想  石川逸子  朝日新聞論壇 1995.5.24

 50年前、私は栄養失調でおできがいっぱいながら「神国日本」は必ず勝つと信じこんだ12歳の少女だった。8月15日を境として、自由という美しい言葉を知り、「聖戦」が侵略戦争だったことも知った。むさぼるように本を読み、やがて恋をし、二人の娘をもった。

 でもそのように生きられなかった朝鮮半島などアジア・太平洋地域の同世代の女性たちがいたことに気付いたのはわずか数年前である。

 ソウルでお会いしたKさん。私より3つ年上の彼女は、成績が良く日本語も上手だったために、勤労女子挺身隊として富山の不二越工場へ連行される。空腹と望郷の思いから脱走したところを憲兵につかまり、レイプされ、軍「慰安所」に放りこまれる。そして性のなにかも知らなかった15歳の小がらな少女は、あるとき立ちあがれなくなるほどにたくさんの軍人たちの相手をさせられ、性病を患った。一銭のお金をもらうこともなかった。

 どことも知れない地の「慰安所」で8月15日を迎えたKさんは、歓喜し、同胞を頼ってようやく帰国の途につくが、出産間近な体であることを船中で人に教えられる。

 死のうとして死ねず、旅館で産みおとした赤ん坊を抱いて故郷の生家へ帰っていった16歳のKさん。でも余りに居づらく家を出て、孤児院に子を預け、日曜ごとに会いに行きながら働いた。あるとき会いに行ってみると、わが子の服を別の子が来ていて、「死んだ」といわれた。それからの長い年月、壊れた身体に苦しみながら一人働き続けてきた。結婚を求められたことも幾度かあったが「日本でのことは話せないし、結婚することはできませんでした」と。たった15歳で夢も希望も折られてしまったKさんの人生。

 この3月、またソウルでKさんに会った。村山内閣の民間募金構想に「私たちは物乞いではない。日本政府は真相を究明し、正直に、きれいに解決してほしい」と憤激しながら訴えられた。彼女が求めているのは、不当に奪われた名誉の回復なのだ。

 Kさんが特別なのではない。数々の資料、被害者たちの証言によって「慰安婦」という性奴隷にされた女性たちの大半は、日本の植民地・占領地の十代の少女たちであり、その企画・立案・管理などを大日本帝国が行っていたことが明らかになっている。それは無類の戦争犯罪・性犯罪であって、わけてもこの犯罪の残酷さは、身体と心に深い傷を受けた彼女たちの惨苦が半世紀後の現在まで続いている点にある。

 加害側にとってはもう遠い過去の出来事でしかなくなっていたのに、被害者たちには現在の生々しい問題であり、加害側は処罰も指弾もされずにきたのに、被害者たちは差別され、自らをおとしめ、その多くはボロボロの身体で生涯独り、流浪の日日を過ごしてきた。いまだ夜ごと、日本軍人に追われる夢を見てうなされる女性たちがあり、日本軍に遺棄され、中国の農村で辛い残生を送っている朝鮮半島の女性たち数人も、昨年確認された。彼女たちの人権はなお奪われたままなのだ。

 加害側と、被害者たちとの、このあまりに逆立ちした関係は正されねばならない。恥ずべきは誰であり、悔いるべきは誰であるのか。

 それなのにこの問題に対して村山内閣が行おうとしている「見舞い金」子宮のための民間募金構想は、Kさんたちを重ねて侮辱するものだ。加害国が、すでに国際的にも明らかになっているこの戦争犯罪の法的責任を負うことなく、高みに立って募金によるわずかな札束で事を終息させようとするとは。

 いまここに、一人の少女を長期に拉致・監禁・レイプした男たちがいて、他人から書き集めたカネを少女に「見舞いだ」と渡して事件を終わらせようとしても、法も世間も認めまい。また当の少女の心の傷はどんなに深くなることか。村山内閣は同じことをしようとしている。国家という強大な権力が組織的に行ったもの故、はるかに罪は重いのに。

 村山内閣は民間募金構想を直ちに中止し国際法に従ってKさんたちへ個人賠償ほかの名誉回復措置をなすべきだ。この国に寝強く現存するアジア人差別、女性差別を正し、新しい歴史を開いていくためにも――。


 投稿者の石川逸子さん(詩人)は昔からの暗川の読者です。
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by lumokurago | 2011-09-10 20:34 | 社会(society)
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