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『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』を読む~日本は駄々っ子

JANJANに書評が掲載されました。

*****

c0006568_11181939.jpg 本文を読み始めて2ページ目で「うーん、どうしてこんなに違うのだろう?」と感じ、読み進むに連れて、「どうして政治家や企業がこんなにまともなの?」と衝撃を受けた。読み終えて、今更ながら「日本は駄々っ子みたい」と恥ずかしく、穴があったら入りたい思いである。

 ドイツ政府の戦後補償は、良識のある“大人”のすることとして実に筋が通っている。それに比べて日本は? もちろんドイツと日本を単純に比較することはできないが、戦争を仕掛けて他国を侵略し、残虐の限りを尽くし、取り返しのつかない多大な犠牲、損害を与え、戦争責任を負っていることは共通している。

 この本はドイツに住む著者が、ドイツ人の過去との対決のディテールを取材して報告した本である。ドイツはナチスの戦争責任に対してどのようなことを行っているのか、具体的にあげてみる。

(1)戦後60年目の2005年に2700万ユーロ(約40億5000万円)をかけて、首都ベルリンの一等地にホロコースト犠牲者追悼モニュメントを完成。こうした施設はドイツ語で、Mahnmal(マーンマール)と呼ばれるが、日本語に適切な訳語はない。忠実に訳せば「過去の犯罪や問題について、現代そして未来の人々に警告するための碑」

 これのみならず、全国数千ヶ所に資料館、追悼碑などがある。

(2)ドイツ政府がナチスの犯罪により被害を受けた人々に払った賠償金は1952年から50年間で604億6400ユーロ(約9兆669億円)。2002年だけでも9億8000ユーロ(約1470億円)が支払われており、連邦財務省は「賠償金の支払いは、被害者が生きている限り続く」としている。ドイツ政府は金による償いが不可能であることは認めながらも、経済的な支援を通じて謝罪しようとしている。

(3)ドイツの歴史教科書ではナチスが権力を掌握した過程や原因、戦争の歴史を詳しく取り上げ、ドイツ人が加害者だった歴史を強調している。歴史の授業は討論が中心で、生徒が歴史的事実をどのように分析、評価するか、そして自分の意見を述べることが重視される。こうした教育を受けていれば批判的な思考が身に付き、将来ナチスのような集団が政権を奪おうとした時に、反対できる可能性が高くなるからである。

(4)ドイツのマスコミは戦後60年以上経った今でも、ナチスの犯罪について喚起する記事を頻繁に取り上げている。戦争関係の記念日には新聞は特集記事で埋まる。ドイツ政府とマスコミは犯罪が繰り返されないためには、国民に情報を与えなければならないと考えている。

(5)ドイツの司法当局は連合国による訴追(ニュルンベルグ国際軍事裁判)が終った後も、今日に至るまで、虐殺などに関わった容疑者の訴追を続けている。西ドイツ政府は1979年に「悪質な殺人」に関しては時効を廃止した。その理由は行方がわからなくなっているナチスの戦犯を訴追するためで、ナチスの戦犯は生きている限り捜査の対象となるのである。

 ドイツの司法界や社会は「ナチスの時代に生きたドイツ市民全員に罪がある」という集団責任は否定し、市民一人ひとりがどう行動したかを基準にして「個人の罪」を追及している。裁きの基準になるのは、個人が「どんな状況でも、人を殺してはならない」という自然法に違反したかどうかである。

(6)1998年に米国に住む強制労働被害者がドイツの大手企業に対して損害賠償を求める集団訴訟を起こしたことを皮切りに、多くの訴訟が起こされた。また、マスコミによって企業がナチス時代に果たした役割について集中的に報道されたため、企業にとって不利な事実が次々と明るみに出てきた。

 ドイツ企業は訴訟の標的となることによって活動に支障が出ることを恐れ、2000年、政府とともにナチス政権下で強制労働などの被害にあった市民のために賠償基金「記憶・責任・未来」を設立した。総額は100億マルク(約5000億円)で、政府が50%、企業が50%負担する。しかし、強制労働の被害者には高齢者が多く、賠償金を受け取らないまま亡くなった人も少なくない。

(7)ドイツ企業の中にはナチス時代に犯した自社の過ちについて、積極的に情報を公開する企業もある。都合の悪いことを自ら公開することでかえって企業への信頼性を高められるという判断であろう。

 さて、一方、日本ではどうか?

(1)A級戦犯容疑者であった岸信介が総理大臣になり、彼を尊敬すると公言して憚らない孫が現在の首相である。現在の首相は首相になってから従来の政府の見解を踏襲してはいるが、持論は「南京大虐殺はなかった」「従軍慰安婦はなかった」「強制連行はなかった」である。

(2)加害の歴史を教える教科書を「自虐史観」とし、アジア太平洋戦争を「自存自衛の戦争だった」と歴史を歪曲した教科書が文科省の検定に合格、この教科書を支持する首長は違法行為まで重ねて強引に採択させている(例:東京都杉並区)。
(参考サイト 「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判の会」http://suginamisaiban.web.fc2.com/ 

(3)マスコミは戦争責任を報道することをほぼ放棄したように見え、少数の良心的なジャーナリストを除き、国民に真実を伝えようという気概をとうに失っている。

(4)中国や韓国の被害者が起こした訴訟に対して、損害賠償を退けるケースがほとんどである。裁判所が国や企業の責任を認めた場合でも「国家無答責の法理」(明治憲法下での国家行為については、市民に損害を与えたとしても賠償しなくてよいとする法理)により、または「除斥期間(訴訟を起こせる期間)が過ぎた」として国や企業を免責している。
(参考サイト 戦後補償主要裁判判例 http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/senngohosyou.htm 

 著者は、欧州では残念なことに、日本について「歴史認識をめぐり頑強な態度を崩さず、周辺諸国と融和しようとしない国」というイメージが定着しつつあると述べている。そして、ドイツが過去との対決によって旧被害国の信頼を回復し、欧州が過去2000年間で最も平和的な状態を実現しているのに対し、東アジアでは「歴史リスク」が増大していることに危機感を抱いている。

 ドイツと日本を単純に比較できないとはいえ、どうしてこれほどの違いが出てきたのかを、私たちは考えなければならない。

 著者がブラント元西ドイツ首相にインタビューした時の、ブラント元首相の言葉の中の「ドイツ」を「日本」に置き換えてみよう。

 私たちは「自国の歴史の流れから外へ出ることはできない」のだから、「日本の歴史の美しい部分だけでなく、暗い部分についても勉強しなくてはならないのです。それは、他の国の人々が、我々日本人を厳しく見る理由を知るためです。そして日本人は、過去の問題から目をそむけるのではなく、たとえ不快で困難なものであっても、歴史を自分自身につきつけていかなくてはならないのです」

 私たちはこのことをあまりにもおろそかにしてきたのではないだろうか。東アジアを平和的な集合体とするために、今からでもいいから心を入れ替えて、日本は戦争責任の所在を明らかにし、次々に亡くなっていく多くの犠牲者たちに謝罪し、補償すべきである。そして次の世代にも戦争の加害の歴史を隠さずに教え、考えさせ、二度と侵略戦争を起こさないようにしたい。

 このことを誠実に実行・努力しているドイツから、確かな説得力をもって書かれた本であった。多くの人にお薦めしたい。

***** 

 なぜドイツと日本はこんなに違うのでしょうか?
ここには書きませんでしたが、なぜ日本人はこれほどに自分の意見を持たないのか?
なぜ「長いものには巻かれろ」「寄らば大樹の陰」なのか?

なぜでしょう?
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by lumokurago | 2007-04-26 20:10 | JANJAN記事
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