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東京杉並<夜スペ>和田中PTA廃止に対し、PTA会長経験者らがアピール
杉並区立和田中学校校長(当時)の藤原和博氏が、「和田中PTAを同校地域本部の一部門とし、PTA協議会(P協)からは脱退、PTA会長は置かない」と事実上のPTA廃止を発表したことに対して、4月22日、杉並区内の公立学校PTA会長経験者らが、杉並区役所で記者会見を行い、PTA本来の役割を確認し、活性化をよびかけるアピール(※後述)を発表しました。よびかけ人は区立小中学校、区内の都立高校のPTA会長経験者15名です。 PTAは学校の補助組織ではない アピール文は、まず、PTAは学校の補助組織ではなく、自主的な社会教育団体として活動し、過去には高校増設、栄養士の全校配置などの成果をあげてきたことを述べました。次に今回の藤原氏の決定は、学校から独立した組織であるPTAを単なる学校の「お手伝い」組織に変え、教員との分断をはかり、P協から脱退することで区内のPTAの横のつながりをなくすものであると批判しました。そもそもPTA総会の議決を経ずに校長が独断で決定したことは越権行為であり、認められないとしています。そして、現在のPTAに「役員のなり手がない」などの問題があるとしても、乱暴に廃止すればいいというものではなく、自主的な社会教育活動としてのPTAに求められる役割はますます大きくなっているとしています。 2002年度に中学校のPTA会長を務めた女性は、PTAは教員と保護者が対等の立場で教育を考えるための組織であり、校長が勝手に廃止を決めたことは民主主義に反する大きな問題だと指摘しました。それから和田中に関するマスコミ報道があまりに一面的だと批判しました。続けて、新聞やテレビが和田中の生徒の顔を露出し、改革だ、挑戦だといって藤原(元)校長を持ち上げ、賞賛する論調が多くみられること、その流れの中で文科省が50億円の予算をつけて、和田中のような地域本部を全国に展開すると宣伝していること、これは進学塾を学校に呼びこんで一部の子に有料で受験指導をしたり、PTAを廃止するという多くの疑問や問題点を含むやり方を安易に容認し全国に広げることになるのではないかと批判しました。 マスコミは和田中モデルを安易に後押しするな 実際には杉並区の他の学校の保護者や地域から、和田中は派手なパフォーマンスで人気とりをしているが、自分さえよければいいという考え方はかえって地域を壊している、子どもたちの人間関係が心配だ、いずれ自滅するだろうという声をよく聞くそうです。マスコミの皆さんにはもっと地域のいろいろな声を拾う努力をしていただき、和田中モデルの地域本部を全国展開しようという流れを安易に後押しするのではなく、公教育とはどうあるべきかという本質的な問題を掘り下げ、読者に考えさせるような記事を書いていただきたいと要望しました。 1967年度に東京都で初めて女性のP協会長になった年配の女性は、空襲で全焼した学校の復旧、6.3制による中学校の新設などの教育環境の整備に公費では賄いきれず、体育館建設のために廃品回収などを行ったお話などをされました。 次の発言者は「地域本部」は行政指導で地域を組織するものだが、PTAは教員と保護者が対等なパートナーとしてやっていくもので、子どもの問題が深刻になっている現在、親と教員、親同士が信頼関係を持って子どもに対応していくことがますます求められおり、今こそPTA活動をもっと活発にしていくよう支援していきたいと述べました。 母親たちは“運動”という言葉にアレルギーがある また、次の発言者は、PTAが育ててくれたから今の自分があるのであって、PTAがなければ社会的な目も育たなかったと述べました。和田中のPTA廃止のニュースを見た時、PTAでそう決めたのなら、「あの学校はそうなのか」と思っただけだが、校長先生が決めたということを知って、「あの学校はどうなっているのだろう?」と疑問に思ったと述べました。 それから、このアピール文の中の「高速道路建設反対運動」の「運動」という言葉を見て、自分はよびかけ人になるかどうか迷ったそうです。というのは、今のお母さんたちは「運動」することは過激なのだとマインドコントロールされていて、本当は大事なことなのに偏見の目で見られてしまうからです。でも、先輩たちのお話を聞いて今、この問題について意見を言っていかなければ大変なことになると思い、よびかけ人になったそうです。 最後によびかけ人の一人が、藤原(元)校長を批判するFAXやメールが何通も来ていると述べ、このような声は多いが、表立って言えないことに大変な問題を感じると藤原氏のやり方に対して危惧を表明しました。 ------------------------------------ <資料> アピール文:「PTA本来の役割を確認し、活性化をよびかけます」 先頃、区立和田中学校校長(当時)の藤原和博氏がマスコミにむけて突如「和田中PTAを同校地域本部の一部門『現役保護者部会』とする。杉中P協(杉並区立中学校PTA協議会)からは脱退し、PTA会長はおかない」と、事実上のPTA廃止を発表しました。この発表は区内だけでなく全国のPTAに衝撃を与えると同時に、多くの疑問点も指摘されています。 そこで、私たちは、PTAの意義と役割についてあらためて考えたいと思います。 (杉並のPTAが果たしてきた役割) 杉並区立各小中学校PTA、および小・中PTA協議会は、どの子にも等しく十分な教育を保障することをめざして活動し、大きな役割を果たしてきました。過去には、高校増設、栄養士の全校配置などの成果をあげ、また、環境を守るための高速道路建設反対運動など学校内にとどまらない活動を繰り広げてきました。 こうした活動ができたのは、PTAが学校の補助組織ではなく、会員自らが学び「人格識見の向上を図る」(杉並区教育委員会『PTAハンドブック』)自主的な社会教育団体として、発言、行動してきたからです。 活動の中で会員自身も成長し、PTAからは、町会や商店会、あるいは消費者運動、福祉団体など市民運動の中心で活躍する多くの人材を輩出してきました。杉並区の各分野でPTA活動の経験が生きています。 (校長主導のPTA「改革」でいいのでしょうか?) 今回の和田中の方針には見過ごせない重大ないくつかの問題があります。具体的には、①学校から独立した組織であるPTAを、単なる学校の「お手伝い」組織に変え、発言の場をなくしてしまう ②PTAを保護者組織に改組することで、PTAのTである教員を排除し、PとTとの関係を分断する ③P協からの脱退で、PTAどうしの横の連携がなくなる という点です。これらは、どれも、PTA活動の根幹を揺るがす問題です。 そもそも、PTA廃止を校長が独断で決定したことは越権行為です。PTA総会の議決も経ずに、校長が一方的に発表したことは、PTAの民主的運営を根底から覆すものであり認められません。 (PTAのよりいっそうの活性化をよびかけます) 杉並区は現在、和田中地域本部をモデルとした「学校支援本部」を全区立小中学校に設置することを計画していますが、もし仮に、今後他校でも和田中に追随してPTAを支援本部のなかに組み込んでしまうなら、学校内での保護者と教員の自由で対等な発言の場はなくなり、学校は上からの一方通行となって、活力を失うでしょう。私たちはそれを恐れます。 現在PTAには「役員のなり手がない」などいろいろな問題があることも事実ですが、他方PTAに求められる役割はますます大きくなっています。したがって、私たち区民は、区立小中学校PTAをもっと充実、発展させるべきであると考えますし、そのために努力したいと思います。 同時に、杉並区教育委員会に対しては、安易に「PTA廃止」論にのらず、自主的な社会教育活動としてのPTAを尊重し、いっそう支援すること、および、PTAについての区民の理解が深まるよう努めることを要望します。 2008年4月 よびかけ人(区内公立学校PTA会長経験者) 15名 氏名略 *****ここまで記事 杉並は教育改悪の最先端を行っています。ここで止めなければ全国に広がってしまいますので、私たちの責任は重大です。今まで比較的中立的な記事を書いていた東京新聞さえが「夜スペ」特集記事を連載3回で始めました。それによると大手進学塾SAPIXには他に9校から提携の打診があるそうです。 今まで学校でだけは子どもが企業の利益追求のターゲットからなんとか逃れていたのですが、その枠をはずしてしまえば、子どもは企業の食い物にされるだけです。教育は利益追求や経済効率とは無縁のものです。そこにからめとられてしまえば、教育は死に、子どもはただ利益を生み出すために利用する対象にすぎなくなります。 いい学校に入ること、いい成績をとることが至上命令とされる中、多くの親や校長などが眼を曇らされてしまいました。しかし塾通いして受験の技術を身につけることと、本当の意味で勉強することは全く違います。アメリカの大学教授に聞いた話ですが、修士論文や博士論文の題材について、「先生、何やればいいでしょうか?」と聞いてきた日本人の学生がいたそうです。アメリカの大学に留学するような「優秀」な学生すらそうなのです。 子どもは課題を与えられて四六時中管理され、競争させられ、評価されています。自由な時間はほとんどありません。こういう育てられ方をしていると、自由になった時、何をしていいかわからなくなってしまいます。 もしかして多くの人は無意識に、「自由になることなどどうせないのだ。これから一生、課題をこなしていくだけなのだから、それでいいのだ」と思っているのでしょうか?? 自由を求めることなどもうないのでしょうか? 参考 どうなる学校 公立が塾と連携(上) 受験指導で人気回復狙う (東京新聞記事) 長い間、水と油の関係だった学校と塾との距離が急速に縮まっている。塾講師が学校の教壇に立ち、教員が塾の指導ノウハウを学ぶ。連携事情を三回に分けて報告する。一回目は、塾の“お家芸”受験指導にスポットを当てる。 (井上圭子) 金曜日午後六時半。東京都杉並区立和田中学校の調理室に、十八人の生徒が集まる。おでんやチキンカツなど、地域の有志らでつくる「地域本部」のボランティアが作った夕飯を進学塾サピックスの講師と食べ、校内夜間塾「夜スペ」に臨む。 「硬貨を五枚投げると裏表の出方は何通り?」「六枚では?」「三人でじゃんけんしたら?」-。講師の矢継ぎ早の質問に生徒たちが即答する。見学していた大阪市教委の担当者はレベルの高さに驚いた。 藤原和博・前校長から「学力中間層以上のケアを」と依頼されたサピックス企画営業部の河合尚男さんは「これだけ注目されたら失敗はできない。エース級の講師を送り込んだ」とやる気満々だ。 数学と英語を週三回。市価の半額とはいえ校舎で塾が有料授業を行う点が議論になっているが、四月に赴任した代田昭久校長は「(地域本部が開く補習)土曜寺子屋で基礎レベルの子のフォローもしており、『不公平』という指摘は的外れ」と強調する。サピックスにはほかに九校から提携の打診があるという。 「塾導入」は広がっている。有名私立校がひしめく千代田区の同区立九段中等教育学校では、三年前から早稲田アカデミーが土曜予備校講座を請け負う。教員らが放課後などに補習をしているが、受験指導まで手が回らない。「私立に負けぬ授業数を確保したいが、中学校の教員は土曜勤務ができないので、力を借りた」と藤井英一副校長は話す。 中学生全員が必修。年間五百五十八万円の費用は区が負担する力の入れようだ。同社経営企画室上席専門職の村上敬一さんは「学校はもう塾の敵ではない」と話す。 高校も提携を進める。都の進学指導重点校、都立青山高校は教員による早朝や放課後、土曜日の受験補習に加え三年前から、代々木ゼミナールのビデオ講座を開いている。「国公立大現役合格七十人」など明確な数値目標を掲げる。 岩崎充益校長は「家庭の事情で塾へ行けない子にも、私立難関中高の生徒と張り合える力をつけさせてやるのが、都立高の使命」と公立も受験対策に積極的に取り組むべきだと主張する。 公立校はこれまで、「受験と教育は違う」という理念から、受験指導からは距離を置いてきた。だが、私立に人気を取られ進学希望者が減る“地盤沈下”に襲われている。 一方で、教員には受験ノウハウが十分にない上に多忙だ。さらに受験指導に批判的な教員もいて、学校が自前で受験対策に取り組みにくい事情がある。 そこで塾の登場となるが、公教育への塾の“浸食”に教員の反発もある。大田区のある公立中の教員は「私たちにも教育のプロとしてのプライドがある。単純に子どもや親に比べられたらたまらない」と話す。 青山高は昨年度、同重点校四年目で初の東大合格者を出した。だが岩崎校長の表情は複雑だ。「私があまりに東大東大と言うので、昨年度『東大がすべてじゃない』と反発して転校した子がいた」 学校は塾とは違う。学級活動も行事も部活もある人間づくりの場だ。だが「実績」を出さねば公立離れは加速するばかり。公立校の模索が続く。 =次回は五月三日掲載
by lumokurago
| 2008-04-26 12:01
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