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2006年の終わりに

今から25年も昔の1980年代の初めのことを、「日本の社会が急激に右傾化し、いつの間にか“戦前”にいるのではないかと、誰からともなく言われ始めていた頃」と、私は本(「負けるな子どもたち」1989年径書房)に書いている。

その本の「はじめに」を開いてみると・・・1982年11月に中曽根内閣が始まり、「行政改革、臨教審、国鉄の分割民営化等、『戦後政治の総決算』と呼ばれる事態が進行し、右傾化が露骨になった。私の職場の状況も、子どもを取り巻く状況も、急激に管理が強まり生きづらくなっている」と書いてある。

あの頃からすでに“戦前”が始まっていたが、2006年という年は、教育基本法改正という国家権力への大きな歯止めを失ったことで、“戦前”を既成事実化した。

私たちは今、完全に“戦前”にいる。このことをはっきり自覚した方がいいだろう。

政府のやることすべては「戦争」に向かっており、2007年は2006年よりも確実にひどくなる。よくなることはありえない。国民が突然気がついて、過半数が暴動でも起こさない限り・・・

さて、読売新聞の今年のニューストップ30によると・・・

1位 90%近い得票で、あるできごと (日本国民の馬鹿さ加減を象徴)
2位 トリノ五輪で荒川静香選手が金
3位 WBC 王ジャパンが初代王者
4位 安倍内閣発足
5位 高校野球で早実優勝
6位 ホリエモン
7位 いじめ問題
8位 日本ハム優勝
9位 子どもの虐待死
10位 福岡の飲酒運転事故による幼児の水死

ということで、あとは高校未履修問題、村上ファンド、自民党の復党問題などが入っている。

さて、教育基本法改正はこの中の何位?

その通り、30位までに入っていないのである。

そして読売新聞社説は「明るいニュースのトップ3独占は、1990年以来だ。ちなみに、90年の1位は、礼宮(現秋篠宮)さまと紀子さまのご結婚だった」と書き、「安倍内閣は、こうした社会状況の中で発足した(4位)。初めての戦後生まれの首相は「美しい国造り」を強調した。それは、文化、伝統、自然、歴史を大切にし、自由と規律を重んじる、凛(りん)とした国だという。教育基本法の改正は、そのための重要な第一歩だった。上位のニュースはいずれも、国内に漂う閉塞(へいそく)感を吹き払ってくれた。来年はあらゆる分野に、さわやかな新風が吹いてほしい。そう切に願う年の瀬である」と結んでいる。

これは読売新聞だから? いや、残念ながら朝日新聞も決まりそうになってから、アリバイ作りにほんの少しだけ批判らしいことを書いただけなので、「同じ穴のむじな」である。

教育基本法ではがんばっていたと他紙に比べ評価されていた東京新聞も、なんと12月16日(参院強行採決の翌日)に杉並区の山田区長が改正を批判するコメントを載せている!! 山田は「つくる会」教科書を採択したんですけど! その上、同日「心のノート」の杉並版である「ココロマメ」「マミコのポスト」という絵本(山田区長のお友だちの高橋史朗氏【つくる会】にもうけさせるための巨額な税金のむだづかい)をカラー写真入りで紹介している。

山田に金もらってるのか、魂を売りわたしているのか。

しかし、嘆いてばかりはいられない。私たちは主権者だ。マスコミにも何にも頼らずに、自分の頭で考えて行動しなければならない。

なんとなくの“戦前”になってから25年間、それでも私たちは戦争を止めてきたのだ(もちろんいろんな意味で加担してきたが違う次元で)。

これからもその期間をできる限り伸ばしていくのだ。
そのために知恵を集めてがんばろう。

と言いつつ、「共謀罪」新設も間近と思われるし、こんなことをブログに書けるのもいつまでか・・・という思いが頭をかすめる。(もうとっくにブラックリストに載ってると思うけど)
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by lumokurago | 2006-12-31 22:46 | 社会(society)

おがさわら丸からの虹

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2年半前、本当におがさわら丸から虹を見ました。
2006年は未来の歴史教科書に載る年になってしまいました。どうやってすべてをやり直せばいいのだろう? 戦後すぐからのすべてを・・・
60年間を・・・

やっぱり、また国民の過半数が痛い目に遭うまで、やり直すことはできないのかなあ・・・

でもそれじゃあ、たくさんの子どもたちが犠牲になった後だ。
私たちの子どもたちが・・・

それに、「戦争のできる国」になるといっても、まず「格差社会」を完成させ、極貧の者を犠牲にするようになるので(戦争に行かなければ食っていけないようにする―今のアメリカのように)、過半数が痛い目に遭うわけではないだろう。だから、一度そういう国になってしまえば、戻ることは至難の業だろう。(アメリカのように)。

「北」の人間は(「南北問題」の「北」です。「北朝鮮」ではなく)、今でも遠い「南」の国を犠牲にして平気でいる。(「ダーウィンの悪夢」という映画が話題になっているらしいが、こんなことはずっとずっと昔からあった)。

人間は本質的に「自分さえよければ」なのだ。

・・・今頃は母島のはずだったのに・・・

海にかかる虹を見たい。
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by lumokurago | 2006-12-30 22:24 | 平和

もう一度提訴する?

もう、裁判の書類とか資料、チラシ、新聞の切り抜き、その他もろもろの紙類で、2つある机の上はもちろん、棚も床も部屋中めちゃくちゃだった。ここ数日その片付け・・・

裁判の書類や証拠は絶対になくしてはいけないので、わかりやすく分類、整理して、やっとこさ落ちついた。それから、原告になってくれた人の封筒などを整理した。なんと安倍裁判の提訴に書類が間に合わなかった人が5人もいたことがわかった。

傍聴に来てくれた人の中で2人、原告になりたいという人がいたし、もう一度提訴したらどうだろうかと考えている。

一度提訴した裁判の原告を増やすということは日本の裁判ではできず、別の裁判を起こすことになるそうだ。そして同時進行するか、または併合することもできる。手数料はかかっちゃうけど、おもしろいんじゃないかな? もう一度記者会見できるし・・・(書いてくれっこないか。でも安倍はもう落ち目だよ。また小泉が出てくると予想している人もいる。安倍をやっつけてもその後がまた小泉じゃね。安倍の方がまだましか。どちらにしても最最最最悪)。

あなたも原告になりませんか? 
ご連絡お待ちしています。

崖を半分以上落ちている今、このままにしておくことはできない。思いついたことはなんでもやらなければ!!
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by lumokurago | 2006-12-29 22:59 | 安倍裁判

生田弁護士から報告とお礼

生田弁護士より
みなさんへのお礼と中間報告が届きましたので転送します。

転送歓迎

賛同者は引き続き募集しています。6つほど下の記事をご覧下さい。より多くの方の賛同をお願いします。

■□□□■■□□□■■□□□■■□□□■
      
       中間報告とお礼

生田弁護士に対する香川県弁護士会の
 不当な「懲戒処分」に対する抗議

日弁連への厳正な調査・審査の要請への賛同

     ありがとうございました!   

■□□□■■□□□■■□□□■■□□□■ ここから
       
   百足(ひゃくそく)の虫は死に至るも倒れず

(百足(むかで)は、足がたくさんあるので、死んでも仰向けになってぶざまな格好をすることが無い。つまり、支援する人が多いとなかなか倒れないというたとえ)

私の、香川県弁護士会による不当・違法な懲戒処分に対し、多数のご支援を賜り、誠にありがとうございます。

日弁連において、異議申立から20日間という超異例の早さで、香川県弁護士会決定の効力停止の決定を得ました。

さらに、ほとんどすべて書面審査が通常となっている異議審査において、異例にも、2007年1月9日午後1時50分、日弁連において、審査申立人(生田)を審査する旨の通知を得ています。

後は、香川県弁護士会の不当・違法な決定をひっくり返すべく努力するのみです。全力で当たりたいと思っています。

「百足の虫」のたとえを、身に染みて実感しました。
ありがとうございました。

とりあえず、中間報告まで。

2006.12.27

弁 護 士   生  田  暉  雄

*********  ここまで
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by lumokurago | 2006-12-28 23:21 | その他裁判関係

母島に行かれない

12月に入ってから、だめもとで母ユース(アンナビーチ母島ユースホステル)に電話したら、「女性一人だけ大丈夫」と予約が取れ、明日の船で小笠原・母島に行こうとしていたのですが、なんとおがさわら丸が満員になってしまっていました。ショックです。

いくら年末年始でも、おが丸が満員になるなんてことあるのか・・・泣・・・

ずっとずっと裁判で余裕がなく、おが丸の予約まで手がまわりませんでした。

これはもうこんなに忙しく余裕がない時は、うちでおとなしくしていた方がいいというサインなのか、それとももし行ってたら、父がどうにかなっていたとか(残っていればなんともなくなるんですよ)、いずれにしても私の無意識のなせる結果なので、よしとしなければ。

まさか、年末年始も裁判の書類書きでもっとがんばれっていうメッセージじゃないよね?!

あっと、ニュースも作らなくちゃ!(「とんでもない!休みなさいよ」、と自分に言っている)。

景色はいくらでも心に思い描けるけど、母島の人たちに会いたかったなあ。(私は5年前に母島に2ヶ月ほど滞在したことがある)。
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by lumokurago | 2006-12-28 20:32 | 未分類

あなたが失望している間に

少し前の記事ですが・・・

週刊金曜日12.1付 No.633より

保坂展人衆議院議員インタビューより  以下引用

かりに改正案が成立したからといって、失望する暇はない。青少年基本法や自衛隊派遣恒久法などが、どんどんやってくる。これはただのはじまりにすぎない。共謀罪も気が抜けない状況だ。小選挙区制で生まれた二大政党の政治が機能しないなら、機能するように地方政治や国政に参加してほしい。

あきらめて亡命したい人には「ご自由に」と言おう。それでも残る人がこの国の歴史を変えていく。あなたが失望している間に、奴らはもっとひどいことを考えている。

(11月23日、談)

20代の保坂君を知っています。あの頃はちょっとちゃらんぽらんぽく、「大丈夫かな」と思いました。社民党から議員になった時は「なぜ、保坂が社民党から?!」と思いました(他に出るべき“党”はなかったが)。でも、今はすごくよくなりましたね。(社民党支持というわけではありません。私は完全無党派なので・・・)
  
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by lumokurago | 2006-12-28 20:04 | 子ども・教育

安倍裁判・準備書面(4)

準備書面(3)で第二回口頭弁論には1時間を取ってほしいこと、口頭弁論を録音することなどを書いて、FAXしたら、数時間後に書記官から電話があって、「できない」と言ってきた。

そこで、準備書面(4)を書きました。

平成18年(ワ)第20396号 安倍晋三等に対する損害賠償請求事件

準備書面(4)

東京地方裁判所民事第43部 御中
2006年12月27日

準備書面(3)の取り扱いについて

2006年12月26日午後、準備書面(3)をA書記官宛にFAXで提出したところ、同日中にB主任書記官から電話があった。原告らが準備書面で提出したものに対して、電話による回答で、しかも原告の質問に返答せず、「窓口に訪問者が来たので」と言って、電話を切ってしまった。

原告は第一回口頭弁論で意見陳述したように、日本が戦争のできる国になることを止めるため、子どもたちの命を守るために、弁護士もなしに必死の思いで提訴した。この裁判は原告らのみの問題ではなく、日本の子どもたちの将来がかかった裁判である。決しておおげさではなく、日本のみならず、日本が将来アメリカと一緒に攻めていくであろう国の子どもたちの命も含め、何万何十万という命がかかった裁判なのである。裁判官、書記官はそのことを理解しているのであろうか? 

M裁判長は第一回口頭弁論で、「民事部には20000件を越える裁判があり、50部で対応している。そのすべてが大切な裁判である」と述べた。その通りである。ならば、そのすべての裁判を大切に扱うために、裁判官らも司法の真の改革のために努力してほしいと思う。そして、そのことを国民にわかりやすく説明してほしい。

この裁判が原告側の勝訴ということになれば、安倍晋三や自民党の暴走に歯止めをかけることができる。本来「三権分立」とはそういう意味である。それが、現在では、司法は「立法・行政」にお墨付きを与えるものに成り下がっている。現在の日本がバランスを失い、戦争の方向に突っ走っている原因の一つには「司法」のそういった体質があると言えよう。

原告はこんな必死な思いで、準備書面を出しているのに、その思いに耳を傾けようともせずに、同日中に書記官が電話で断ってくるとは不誠実もはなはだしいと言わなければならない。私たち大人は死神になることなく、日本が戦争のできる国になることをなんとしても止めなければならない。それが一人の大人としての責任である。

第一、裁判所は書面には書面で回答すべきである。

最後にもう一度、録音テープの必要性を述べる。松山地方裁判所における「つくる会」教科書に関わる裁判で、裁判長が「次回から内容に入る(原告適格をクリアしたという意味)」と述べたにも関わらず、次回になってその言を覆した例がある。こういう重要な発言を「言った」「言わない」論議になることを避けるためにも、録音テープは必要不可欠である。
百歩譲って原告が録音することは禁じられているとしても、裁判所が録音できないはずはない。

結語

1. 裁判所は原告の子どもたちの命を守りたいという必死の思いを汲み取り、この裁判の重要性を認識すること。
2.その上で準備書面(3)に対して、書面で回答すること。
3.裁判所で口頭弁論を録音し、そのテープを公開すること。
4.裁判所はカビの生えた「慣習」にこだわらず、真の司法改革のために、国民主権に基づく「ひらかれた裁判」をめざして努力すること。

以上を求める。
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by lumokurago | 2006-12-26 22:28 | 安倍裁判

生田弁護士への手紙

生田暉雄様

先日はいろいろとありがとうございました。

教育基本法が死んだその日に、私たちは「主権」を獲得しました。

憲法に「この憲法を守るために国民は不断の努力をしなければならない」とあるのに、今までの私たちは努力が足りなかったと思います。友人のひとりも「民主的な国で国民が主権者であろうとするなら、政治的な活動は不可欠ということを今回ほど実感したことはありません。個人が自分の考えを政治に反映させる具体的な手段を持つことが必要なのです」と言ってきました。

その「手段」の有効な一つが裁判だということがわかりました。

国民全体のおめでたさを見ていると、ついつい絶望的にもなりますが、私たちはやっと手に入れた「主権」を、これから行使していきます。また、この「主権」の真の意味(実感でき、実際に行使できるものとしての「主権」)を一人でも多くの人に気づいてもらいたいと思っています。そのためにできることはすべてやっていくつもりです。

自分で裁判を行ったことで、人生観が変わりました。裁判がなければ12月15日は絶望の日だったと思います。もしかしたら、厭世気分が高まって、どこかの島に逃げたかもしれません。

しかし、私は逃げませんでした。私たち原告みんなは「主権」を行使する術を知り、教育基本法が改悪されたというのに、これまでにはなかったほど元気で、勇気に満ち溢れています。

第2回以降はこううまくはいかないと思いますが、何とか知恵を集めてがんばっていきたいと思っています。もうあきらめることはありません。それもお題目ではないのです。たたかう「手段」を手に入れたのですから。

生田さんに心から感謝しています。
お体に気をつけて・・・そしてまた、よろしくお願いいたします。

(皆様へ 生田弁護士支援の署名にご協力下さい。2つ下にあります)
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by lumokurago | 2006-12-25 22:18 | 社会(society)

安倍裁判・JANJAN記事

15日の安倍裁判を傍聴してくれたJANJANの記者が記事を書いてくれました。
テープにとっていたの?という位詳しいです。

そしてとてもおもしろい!
笑っちゃう!

「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」傍聴記

 杉並区で「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」)の教科書が採択されたことに対し、地元住民らが、教育基本法10条(筆者注:教基法10条「教育は不当な支配に服することなく……」)に違反したとして、安倍晋三首相(提訴時は内閣官房長官)と自由民主党を提訴した民事訴訟(「平成18年(ワ)第20396号損害賠償等」、原告側は「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判」と呼称)の第1回口頭弁論が、12月15日(金)午後1時30分より東京地方裁判所で行われました。

 昨年、杉並区では、区が「つくる会」が執筆した教科書の導入を採択したことに反対する市民らによる運動が起こりました。杉並区の「つくる会」教科書採択反対運動は、テレビでも放映されたので、裁判に対する関心が高いのではないかと思い、早めに裁判所に行きました。

 しかし、予想していたような混雑はなく、傍聴人は裁判開始後に入ってきた人も含め23名でした。ただ、同じように「つくる会」教科書採択取り消しの裁判を行っている愛媛や栃木などの関係者たちも傍聴にきていて、この裁判が全国的な広がりをもっている裁判であることがわかりました。

 裁判がはじまる前、原告代表の女性が、「法廷の前の掲示板に書いてある被告が自由民主党となっているので、安倍晋三の名前も入れてください」と抗議をしていました。また、裁判所の作った書類に入力ミスがあったらしく、名前を間違って書かれた原告の女性が注意をすると、裁判所の係りの若い男性が「すいません」と謝っていました。「この前も字が違ってましたよ」と言われ、男性が「パソコンで出なかったものですから……」と弁明すると、「私たちが間違ったら、ハンコやらなにやら大変なのに」と言うと、「直してきます」と言いながら向こうに行きました。

 原告は、女性5人、男性1人の計6人です。今回は、弁護士のいない本人訴訟なので、裁判長に裁判のやり方を教わりながら審議を進めていく形式でした。原告の率直な質問や要望に対し、裁判長が<女性パワー>に押され気味ながら、最後まで原則論で答えているのが、まったく議論がかみ合っていない感じで、笑いを誘いました。ふつうの裁判とはかなり趣を異にした裁判の光景であるとの印象を持ちました。

 傍聴席の正面のドアが開いて法廷に入ってきたときから裁判長はひどく緊張した感じでした。席に着くと同時に相手のペースに引きずられまいとするように、被告は出廷していないことを告げたあと、「まず、断っておきたいのですが」と言いながら、民事訴訟における口頭弁論の在り方について説明をしました。

 それによると、裁判で議論を詰めていくのはもちろん大事だが、書面が重要であり、書面を尊重すること、それは裁判所が年間2万件以上の裁判を50部(筆者注:東京地裁の民事部は50部)で行っているため、一つひとつの裁判に時間をかけることができないためであること。そして議論があるのは承知しているが、どの裁判も重要なので、迅速且つ適正な判決をしなければならない、と裁判所の実情を説明し、協力を求めました。

 さらに「今日は原告に10分間の時間を与えることができるが、今後はそれができるかどうかわからない」と述べ、口頭弁論では主に書面の確認と補充といったことのやり取りになることを理解してほしい、と重ねて協力を求めました。

 それに対し、原告代表は裁判に臨む思いを「教育基本法改正案が参院で強行採決されるかもしれないという今日(筆者注:この裁判が行われた12月15日夜、教育基本法改正案が成立した)、安倍首相を訴える裁判の第1回目が開かれたことにめぐり合わせを感じます。一期一会の機会。裁判官は法衣をまとった国家のロボットでなく、事実に基づいた公正な裁判をしてほしい」と語り、教科書採択に対する安倍首相らの介入は一市民として許せないとの思いから裁判を起こすに至ったと、訴訟の理由を述べました。

 原告は「弁護士もいない、生まれてはじめての裁判なので、いろいろ教えてください」とお願いをしたあと、「対等な人間として裁判長と呼ばず、『さん』付けで呼びたいので、名前を教えてください」と続けると、裁判長は「(名前は)入口の掲示板に書いてあります」と答え、「3人のだれがだれだかわからない」と重ねて尋ねると、「掲示板に書いてあります」と答えながらも、裁判長が3人の裁判官の名前を教えました。裁判官を名前で呼んでもいいかという質問に対し、「慣例に従って(裁判長と呼んで)もらっている」と裁判長が答え、「それでは松井裁判長(筆者注:裁判長の名前は松井英隆さん)と呼びます」と原告が応じ、次に意見陳述に進みました。

 原告代表が「素人が国家の中枢である安倍首相と自由民主党を訴えた裁判なので、口頭で言わせてほしい」と要望を述べ、「この裁判の録音テープを公開することはできますか?」と尋ねると、裁判長は「録音テープについてはできない」と答えました。原告側が重ねて「(裁判所では)録音テープはとっているのか」と聞くと、「とっていない」と答えました。

 原告の「(この裁判の)中身の記録は残らないのか」という質問に対しては、「書記官が必要な部分については記録をしている」と述べました。それに対し、原告代表が「どの部分をメモしてどの部分をメモしないのか、それは書記官の判断によるのか」と尋ねると、裁判長は「そうだ」と答え、「それではこの裁判で話し合われたことが全部記録として残らない」と言うと、裁判長は「裁判所としては適切に対応している」として、原告に理解を求めました。

 さらに、原告代表が「そちらの事情もわかるが、こちらの意見として口頭で述べたい」との主張を繰り返した上で、「50代、60代、70代の親たちは、みんな戦争は真っ平だと言っている。安部がやろうとしていることは、20にもならない若者たちに戦争に行けと教えることだ。これは松井裁判長も同じ思いをもっているはずだ。戦争はもうコリゴリだという親の思いを受け継いだものとして、次の人たちにバトンタッチをしていきたい。拙い陳述書で訴えたいことはそのことだ」と述べ、裁判を起こした理由について明らかにしました。

 ほかの原告も録音テープをとってほしいと訴えましたが、裁判長は、逐一の微妙な発言が記録として残されるような仕組みになっていないこと、基本は書面であり、書面を中心として進めてもらいたい、と原告に理解を求めました。それに対し、原告側は「国民は裁判を受ける権利がある。憲法で保障されている」として口頭での裁判を重ねて主張しましたが、受け入れられませんでした。

 原告側は、裁判の速記録もないことに対し、「書記の人の判断でメモをとっているということだが、それだと正確な記録として残らない」と主張し、録音テープをとることを要望しましたが、「許可していない」として退けられました。さらに、原告側から裁判の進め方についての要望がありましたが、裁判長に「慣例に従ってほしい」として退けられました。

 原告代表は、被告ら(安倍首相と自由民主党)に対し、損害賠償としてそれぞれに1,000円ずつ支払うことや、謝罪広告を載せることなど、4つの要求を読み上げたあと、意見陳述を行いました。

原告の意見陳述

 「昨年8月、安部および自由民主党が(教育における不当な介入を禁じている)教育基本法10条に違反し、杉並区において『つくる会』の教科書を採択しました。安倍は内閣総理大臣として憲法遵守の義務があるにもかかわらず、憲法違反を行っています。(略)

 国民の多くは教育基本法改正案に対し、慎重審議を求めています。安倍はやらせタウンミーティングなどで世論を誘導し、成立させようとしています。これは国民を愚弄するものです。政府の改正案は国家主義を目的にしたものであり、日本は同じ道を後戻りしています。つくる会の教科書はその前倒しです。安倍は政治介入し、子どもや教育から自由を奪い、国のために喜んで命を捨てる子を作ろうとしています。

 戦争は金儲けのために行われるものです。人間の形をした悪魔のために殺される。弁護士のいない本人訴訟ですが、安倍と自由民主党を訴え、1人の大人として、日本の子どもと外国の子どもを守りたい一心で裁判を起こしました。庶民の必死の思いを汲み取ってほしい。人間には、人間としての尊厳と誇りが……」と述べたあと、思いがあふれて言葉にならないといった感じで絶句すると、傍聴席から拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手はやめてください」と傍聴席に注意をしました。

 あとを引き継いで、原告代表の隣に座っていた原告の女性が意見陳述を続けました。

 「国のために死ねと言われた親や祖父母は、平和を祈っています。政治家も後藤田さんや野中さんなど戦争体験者は戦争に反対し、改憲に反対しています。経済界の品川正治さんも、戦争だけは絶対やってはいけないと言っている。いまならまだとめることができます。その力が裁判所にはある。大人一人ひとりが誇りと人間の尊厳をもって、裁判所が良心と良識をもって憲法遵守の裁判を行ってほしい」と読み上げると、傍聴席からまた拍手がわき起こりました。裁判長は「拍手をすれば退廷してもらいます」と注意しました。

 次いで、後ろの列に座っていた原告の女性が立ち上がり、意見陳述をしました。「1人の人間として訴えたい」との思いを伝えながら、3人の裁判官を名前で呼び、「客観的、科学的、中立的な立場で裁判を行ってほしい」との要望を述べた上で、「つくる会の教科書は自国への愛と誇りに満ち溢れているが、自国への愛の前に過去の真実を見る態度として適切か」と問いかけました。

 つづいて「真実を求めるのが人間。過去と向き合い、真実と……」というところで、裁判長が「時間がありません。あと1分ほどです」と制限時間を告げると、少し早口になって「安倍はどうか。安倍は好きなように変えている。規則がやすやすと変えられる現状。たやすく……」というところで、また裁判長が「あと10秒」と告げ、さらに言葉を続けようとする原告を遮って「そこまで」と制限時間が切れたことを告げました。

 傍聴席から拍手が起こると、「やめてください」と裁判長が注意し、ほかの原告が「あと30秒」と発言を求めると、「やめてください」と裁判長がやや強い口調で発言を制しました。さらに発言を求める原告とのやりとりがあったあと、裁判所の指示に従わない場合は訴訟法に則って退廷してもらいますと裁判長が言い、原告はあきらめてそれ以上の発言はしませんでした。

 最後に、裁判長が訴状について不明な点があるとし、被告によるどのような不法行為があったのか、具体的に記した書面を提出してほしいと述べ、原告が1月末までに裁判所に提出することで合意しました。また、裁判長は、民事訴訟における口頭弁論は一方的に意見を述べる場ではないとして、原告に理解と協力を求めました。

 次回の裁判は、2月16日(金)13時15分より、東京地裁527号法廷で行われる予定とのことです。

 裁判が終わったあと、別室で原告と傍聴人の交流会がありました。愛媛「教科書採択の無効確認訴訟」の生田弁護士も傍聴にきていて、生田弁護士は「面白かった」と裁判の感想を述べながら、「男性だとなかなか思っていても、口に出していえないものだが、女性はやっぱり強い。裁判長を名前で呼びたいと言われて裁判長がビックリしていたが、結局名前を言った。点数をつけるとしたら、90点。この調子で次回も頑張ってもらいたい。楽しかった」と激励しました。

 栃木で教科書採決取り消しの裁判をしている女性は、「裁判長によってはまったくこちらの言い分を聞かず、いきなり結審してしまう裁判長もいる。その点、今日の裁判長は優しいと思った。栃木は保守的な土地柄もあって、教師が言いなりになっている。東京では教師が闘っているのでうらやましい」と述べ、これからも情報を共有し、連携していきたいと述べました。

 裁判で最後に発言をした原告の女性は、小学校1年生のお子さんがいるとのことでした。時間を気にしながら意見陳述をしたそうですが、裁判長がなにもいわないのでそのまま続けたと言い、裁判の感想は、「楽しかった。意見陳述しているときは気持ちがよかった」と述べ、「チョー、気持ちいい!!」と言うと、どっと笑いが起こりました。たしかに見ていて、女性パワーにさすがの裁判長もタジタジといった感じでした。


【筆者の感想】

 本人訴訟の裁判というものをはじめて傍聴しました。裁判というとやはり当事者にとっては大変深刻な問題であり、傍聴するほうも、なんとなく緊張を強いられるものですが、こういうふうに市民がときの最高権力者と政権政党を訴えるということを通して自分の考えを伝える方法もあるのだということに、新鮮な印象を持ちました。

 教科書問題や教育基本法改正案など、国の根幹にかかわる重要な問題について告発している裁判なのですが、あまり深刻にならず、楽しんでやることで、同じような思いを抱いている人たちの共感を得ることができるのではないか、との感想をもちました。

 意外だったのは、「裁判でどんなことが話し合われたのか、記録として全部残るのか」と原告が質問したとき、裁判長が、「必要なことは書記官がメモをとっているが、全部のやり取りが記録として残るわけではない」と答えたことでした。民事裁判では書面でのやりとりが中心になるということは聞いていましたが、裁判所でのやり取り全部が記録として残るわけではないということは、初めて知りました。
(ひらのゆきこ)
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by lumokurago | 2006-12-24 12:12 | 安倍裁判

生田弁護士不当処分に対する要請・賛同のお願い

★賛同のお願い:生田暉雄弁護士@香川 不当処分に対する日弁連への要請
(転送、リンク、掲載歓迎)

 斎藤貴男さんも呼びかけ人になってくださいました。

★生田弁護士は私たちの市民運動になくてはならない人です

生田暉雄弁護士は、権力を持つ者に対しても決して妥協せず、自らの信念と情熱に基づいて、不屈のたたかいをつづけている稀有な弁護士です。

私たちは「つくる会」教科書を採択した杉並で、いくつもの裁判を起こしてたたかっていますが、生田弁護士は手弁当で高松からかけつけてくださり、力強く応援してくださっています。先日の安倍晋三を訴えた裁判では、前日に上京し、知恵を授けてくださいました。当日も傍聴して、「90点以上のできだった」とほめてくださいました。

私が安倍裁判を提訴するかどうか迷っていた時には、「わしはたった一人をこそ応援する。おおぜいいる方はぬけて、たったひとりを応援する」とまで言ってくださいました。

その生田弁護士が香川県弁護士会から不当な「懲戒処分」を受けました。生田弁護士の妥協せぬたたかいが弁護士会にとっては煙たいのでしょう。

生田弁護士は日弁連に「異議申立」を申し立て、現在審議中です。私たちは日弁連に厳正な調査・審査と「処分の取り消し」を求めて要請しています。

お世話になっている生田弁護士のために、どうぞひとりでも多くの方が、賛同してくださいますよう、お願い申し上げます。

要請書は以下です。

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生田弁護士への「懲戒処分」の厳正な調査・審査、一刻も早い「処分の取消し」決定を求める要請書

--香川県弁護士会の「懲戒処分」はデッチ上げです--

日本弁護士連合会 御中

私たちは、香川県弁護士会による生田暉雄弁護士への理不尽な懲戒処分に対して、不正や卑劣な行為を許せぬ一市民として、強い憤りを持つ者たちです。

生田暉雄申立人による「懲戒処分の効力停止申立」に対する貴会の迅速な「効力停止決定」に対して、まずは、敬意を表し、合わせて、生田暉雄申立人による、同デッチ上げ「懲戒処分」への「異議申立」を厳正に調査・審査し、一刻も早い「処分の取消し」決定を行なうことを強く要請します。

「処分の取消し」要請理由

1.香川県弁護士会による生田暉雄弁護士に対する「懲戒処分」は、捏造であり、デッチ上げである。
2.香川県弁護士会による生田暉雄弁護士に対する「懲戒処分」は、適正手続きを経ていない。
3.生田暉雄弁護士は、言葉の本来の意味での正義を追求し、この社会の、とりわけ権力機関や権力を持つ者の不正に対し、妥協せぬ闘いを続けている弁護士である。香川県弁護士会によるデッチ上げ・不当「懲戒処分」を厳正に調査・審査し、その過ちを正し、弁護士(会)の本来の社会的使命を果すように促すことが貴会の使命である。

2006年12月  日

呼びかけ団体・個人

斎藤貴男
杉並の不当な教科書採択取り消し裁判の会
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会
えひめ教科書裁判を支える会

賛同先:「杉並の不当な教科書採択取り消し裁判の会」
お名前とご住所をお送り下さい。
お名前の公表の可・不可とあれば肩書もお願いします。
lumokurago@ybb.ne.jp 
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by lumokurago | 2006-12-23 21:44 | その他裁判関係