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がんと闘わない生き方(13)乳がん患者のメーリングリストに思う

がんと闘わない生き方(13)乳がん患者のメーリングリストに思う

 乳がん患者のメーリングリスト(以下、ML)があります。乳がん体験者が情報交換し、悩みを語り合い、励まし合うという目的で作られています。メンバーには乳がんの専門医など医療関係者もボランティアで入っておられます。

 私が治療した2000年当時の会員数は約300人、現在では1000人を超えているそうです。小さな子どもを抱えた若い患者さんが多く、「絶対に死ねない」という人ばかりで、メールに込められた彼女たちの心情は同じ女性として身につまされるものです。ここでこのMLの批判をしますが、彼女たちを貶(おとし)めるものではないことをご理解願いたいと思います。

知識と客観的な視点を持つことの大切さ
 このMLでは、著書に「転移した乳がんは原則的に治らない」と書いている近藤誠医師は「残酷、冷徹、科学一辺倒の非人間」と見られています。近藤医師の本をちゃんと読んでそう言っているのかどうか疑問なのですが、人間は「治らない」と言われたくないものなので、そういう見方をする人がいるだろうことは想像できます。

 しかし「治らない」ということや、再発転移した乳がんに抗がん剤は効かないのだということを客観的に理解していないと、やみくもに治療を続け苦しんだり、かえって命を縮めることにもなってしまいます。

 転移して抗がん剤治療を受け、副作用に苦しんでいるある患者さんが、「抗がん剤治療は苦しい。もう止めたい。でもこれは悪魔の声だ。悪魔の声に負けず治療をがんばらなくては」と投稿していました。しかし「抗がん剤治療は苦しい。もう止めたい」というのは「悪魔の声」などではなく、まさに彼女の体のそして心の正直な声なのです。

 ここには「転移した乳がんは治らない」「抗がん剤治療は意味がない」なんて、口が裂けても言えない雰囲気があります。もし言ったとしても、それを聞いた彼女たちが抗がん剤治療を止めるようになるとは思えず、逆効果で、そんな残酷な言葉に負けずもっとがんばろう、となってしまうでしょう。私は彼女たちの無駄な苦しみを見ていることがあまりにつらいので、意見を送ろうと下書きしたことがあります。でも、やはり逆効果だろうと判断し、送ってはいません。

 「抗がん剤治療はデータではなくギャンブルだ」という投稿を見たこともあります。死にたくないという一心であることはわかりますが、あるかないかもわからないチャンスを求めて正常細胞もやっつけ、寿命を縮めるのは自分を大事にしていないとしかいいようがありません。抗がん剤治療はしてもしなくても、生存曲線は変わらないのです。

人間の孤独が人間を成長させる
 乳がん患者は苦しみや不安を抱え悩んでいるので、同病の者が集まって気持ちを吐露し合い励まし合おうという場はとても大切だと思います。けれども私はこういうことも感じています。このMLに入るとみんなが気持ちを吐露し合っており、自分もそうしようという気持ちになります。そして苦しさや悩みを書いて送ると、すぐに何通もの返事が来るのです。苦しい気持ちを理解して「がんばれ」と励ましてくれるのです。

 苦しい時、つらい時は、まずひとりでそれを抱えて、その気持ちをよくよく感じてみることが必要だと思うのです。よくよく感じることでその気持ちの持つ意味(体や心からの声)を聞き取ることができるのではないでしょうか。そしてその声を聞き取ることができた時、その人は自分の力で苦しみや悩みを乗り越えることができるのだと思うのです。

 もちろん友だちからの理解や励ましが必要でないなどと言っているのではありません。でも自分自身で自分の気持ちをよくよく感じる前に安易に他人に吐露してしまうと、安易に励まされ、安易に解決(本当の解決ではなく浅いその場しのぎ)されてしまうような気がするのです。励ます方だって安易に励ましてはいけないと思います。その人が自分の気持ちと向かい合って体や心からの声を聞くことができるようになるための助言がふさわしいのではないでしょうか? 大事なのはその人自身が自分の体や心からの声に耳を傾け、自分で解決の方法を発見することだからです。

メールという安易な手段の弊害
 話題は乳がんから離れますが、これはメールという安易な手段の弊害の例かもしれません。普通なら人は悩みを打ち明ける時、いろいろ考えると思います。相手は誰が一番適切か、どこまで話すのか、はたしてわかってもらえるだろうか、友だちの顔をあれこれ思い浮かべて、その人たちの性格に思いをめぐらせるかもしれません。それに電話するには勇気がいるかもしれません。

 ところがMLではそれらのことをほとんど考える必要がなく、特定の相手に送るのではないので相手の気持ちを考えずにすみ気楽。メールはご承知のとおり手軽で安易にできます。返事する方だって顔も見ていないのですから、安易に励ますことができ、責任がなく、何かいいことをしたような気にもなれます。こういう見方は厳しいでしょうか? 

 私は人間とは孤独なものだと思います。もちろんだからこそ交流を求め、交流に喜びを感じるのですが。このメールというものは、一歩使い方を誤ると何かこういう人間の本質に反するところがあるような気がしてなりません。

 しかし、メールはすでに生活の中に深くしみ込んで、止めることはできません。古い世代の人間はメールを使っていても、生身の人間関係の体験が色濃くあるので、同じメールでも、手紙に似たものにとどまっているかもしれませんが、若い世代は生身の人間関係を作る前にメールの世界に入り込んでいます。

 ここで詳しく述べることはできませんが、私は長年学童クラブという子ども相手の仕事をしていて、子どもとも親とも人間関係が非常に薄いものになってきたことを感じていました。すでに人間の本質は変化しつつあるのかもしれず、今後ますますその傾向は強まっていくでしょう。私のような「化石人間」の出る幕は、とっくに終わっているのだという気もします。

by lumokurago | 2009-06-13 22:04 | がんと闘わない生き方
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