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「芽むしり仔撃ち」大江健三郎

 最も古い本をとってあって、もう一度読み返している。そのなかに「芽むしり仔撃ち」があった。これは大江が「昭和」33(1957)年に最初の長編小説として発表したものだそうだ。私の持っている本の奥付は「昭和」47年11刷、120円。私が読んだのは10代後半だろうか。

 暗い小説だ。戦争末期のどこかの田舎の村に感化院の少年が疎開するのだが、村に疫病がはやり、村人たちは少年らを見捨て、閉じ込めて、逃げてしまう。村に残されたのは父親の遺体を守る朝鮮人の少年、母親の遺体から離れられない少女、脱走兵・・・少年たち。

 見捨てられた彼らは徐々に協力しあい、友情が育まれる。力を合わせて死体を埋葬し、少女と主人公の少年のあいだには愛も生まれる。しかし、その少女も疫病で死ぬ。主人公の弟(この子は感化院の子ではなく、父親が一緒に疎開させてほしいと連れてきた)が雉をとって、祭をするのだが、彼の可愛がっている犬が少女に疫病を移したのだと、仲間に撲殺されてしまう。彼はそれから姿を消す。

 そこに村人が戻って来て、少年らが勝手に食物を取ったなどと責め立て、殴り倒す。脱走兵もつかまり、竹槍で腹を刺され、死ぬ。主人公以外の少年は村人に屈し、べつの村に疎開先を移すことになる。一人残った主人公は脱走を試みる。

 そこで小説は終る。

 「カッコウの巣の上で」に似ていないこともない。「カムイ伝」にも、ちょっとだけ。

 「カッコウの巣の上で」で最後に精神病院の窓を割ってでていくチーフは大人だし、体力もある。精神病院を変革しようとしたマックマーフィーはロボトミーを施されて廃人になり、チーフが殺すが、チーフだけは自由になれる。そんな最後だった。しかし、「芽むしり仔撃ち」の主人公の少年は、子どもでもあり、疲れており・・・。村人は彼を殺そうとそこまで追ってきている。

 この小説に希望はない。

 私がこんなに冷静な性格になったのは10代でこんな小説を読んでいたからだろうか。変革をめざすものは必ず権力によってつぶされる。仲間は裏切る。大江もそう思っているのだろうか。とにかく悲惨な小説だ。

by lumokurago | 2011-11-25 14:37 | 本(book)
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