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暗川  


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by lumokurago
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試写会での挨拶

試写会での挨拶_c0006568_8244274.jpg
 110名ものお客様で超満員に。
試写会での挨拶_c0006568_8252592.png
 顔面神経麻痺のため、口がうまくまわりません。

 本日は暮れの忙しいなか、こんなにおおぜいのみなさまにお集まりいただきまして、ありがとうございます。まず、私の病状ですが、映画のなかにもでてきましたが、耳の近くにある蝸牛骨のそばを通っている顔面神経を、転移したがんが圧迫しているために起こる顔面神経麻痺が、再びひどくなったため、放射線をかけています。

 もう1か所、胸椎(背骨)に20回の予定でかけはじめました。これは9月はじめ頃から背中が痛くなり、痛い場所は右から左、背中から胸と移っていたのですが、胸椎への転移が大きくなって脊髄を巻き込んで神経痛を起こしているということで、行なっています。

 骨転移というのは、がんが成長するために骨を溶かして、できたすきまを埋めていくんですね。だから骨がもろくなって折れやすくなっています。今回放射線をかけている転移は大きいので、がんが放射線で小さくなると、胸椎が空洞になっているわけだから、それがつぶれることになります。まっすぐにつぶれればいいけれど、斜めにつぶれるとそこから下の部分に麻痺がおこるそうで、その場合、24時間以内に緊急手術を行なうと麻痺を防げるそうです。

 通常、放射線治療は毎日行なうのですが、麻痺がおこるかどうか様子をみながら1日おきに行なっています。途中で麻痺がおこらなければですが、来年の1月いっぱいくらい治療がつづくことになります。まあ、麻痺がおこると言っても5割にも起こるわけではなく1割か2割だそうなので、そんなに神経質になる必要はないと思います。

 肺と肝臓にも転移があるのですが、肺転移にはホルモン剤がよく効いて、いまのところCTにも映らないほどに小さくなっています。肝転移はホルモン剤があまり効かないらしく、64ミリの大きさになっています。肝転移に放射線をかければ延命できるということなのですが、延命しているあいだに骨転移が育ってくると、またひどい痛みがでたり、麻痺がでたりするかもしれないので、延命するかしないかは人生観の問題ということになります。

 さて、この映画ですが、ひょんなことからビデオプレスの佐々木さん、松原さんと知り合って、こんな映画を作っていただいて、とてもうれしく思っています。私はもともと寡黙なうえ、学童クラブで働いていて、子どもや保護者の話を聞くことが仕事だったということもあって、ふだんから人の話を聞く立場になることが多いのです。人の話を聞くことは得意です。私は若い頃から個人通信をつくりつづけ、ものすごい量の文章を書いてきた、書くことで自己表現してきたということはあるのですが、「話す」ということはあまりなかったと思います。それで今回インタビューを受け、自分のことを話せるのがうれしくて楽しくてしかたがありませんでした。自分のことを思いきり話せるというのは快感ですね。

 私は「主権実現の手段としての裁判」という、香川県在住の生田暉雄弁護士が提唱する本人訴訟で杉並区の教育裁判をたくさんやっています。ちょっと裁判の宣伝になってすみません。国民主権と言っても、選挙に行くのは3割から4割しかいないし。デモに行く人はほんの一握りです。主権を行使する手段としては裁判という方法もあるんですね。本人訴訟の裁判というのは、弁護士に依頼せず、自分たちで訴状や準備書面を書くので、お金はかかりません。印紙代の13000円だけです。安倍元首相を訴えたりもしたのですが、法廷で口頭陳述すると、主権は自分にあると実感することができます。それはすごい開放感なんですね。この映画で自分のことを話したのも、同じくらい気持が開放されました。近藤先生はテレやなのか、自分がでている映画とか番組は見たくないとおっしゃっていましたが、私は目立ちたがり屋らしく、喜んで見ました。

 なによりうれしいのは、日本の医学界全体を敵にまわして真実を訴え続けてきた異端の医師である近藤誠の理論を広めることができることです。彼はあと2年で定年退職を迎えます。彼は35年以上の医者生活で、患者を診ながら勉強に勉強を重ねた結果、「がんは無治療がいい」という世間から見れば衝撃的な結論にたどりつきました。彼は勉強が大好きで、勉強が趣味なんですね。そうやって勉強してきて、たどりついた真実を微力ながら広めることができたらと思っています。

 やはり「がんは治る」という本はウソでも売れるけれど、私の本のような「治らないものはあきらめよう」などという本は売れませんからね。宣伝しておきますけれど、近藤先生は来年、「がんは無治療のほうが長生きできる」という本をだすそうです。私も前著をもっとやさしく解説し、医療信仰や過剰医療を批判した、読みやすいはずの本をだすことになっています。

  「乳がん 後悔しない治療」を読んでくれて、乳がんがみつかったけれども無治療を選択した人が2人もいるんですよ。乳がん自体では死ぬことはなく、いまはピンピンしているのに、治療すれば抗がん剤も勧められ、リンパ節廓清などしてしまうとリンパ浮腫になる恐れがでて、いまの快適な生活が壊され、やりたいこともできなくなってしまうということなのです。一人のかたは農業をやっているのですが、「20年後生存率」よりも、「5年間幸せ率」を選んだそうです。一度変な医者にかかってしまうと、「抗がん剤をやらないと何年以内に再発する」などと脅されてバトルも大変ですからね。彼女はがんが大きくなって生活に支障がでたり、転移したときに、自分の考え方を理解してくれる医者がいるのかを心配しています。だから、小さいうちにしこりだけ切り取ってしまう選択肢もあるよ、近藤先生が定年退職するまえでないと、そういう対処法を認めてくれる外科医もいなくなってしまうかもしれないから、あと1年位様子をみて、大きくなるようなら考えてみたらと言ってあります。それは乳がんが命に関係ない乳房のがんだからできる対処法です。内臓のがんであれば、そういう小さい手術でも後遺症がでる恐れがあるので、何もしないほうがいいです。

 この映画をみてくださったかたが、行き過ぎである現代医療に疑問をもち、医者のいいなりにならずに自分で勉強して、がんには「無治療」という選択があるのだということをわかってくださればと思います。

 先日、亡くなった絵本作家の佐野洋子さんの「死ぬ気まんまん」を読みました。佐野さんは私と同じ乳がんの骨転移で苦労したみたいです。言いたいことをはっきり言う(書く)かたで、これも痛快なエッセイとされているのですが、がんに対してはかなりおおざっぱな性格ではないかと思わせられます。書かれたことから推測するだけですが、どうもがんについて何も勉強せず、医者のいいなりになっていたようなのです。点滴されている薬の名まえも知らず、名まえはわかっていても何の薬なのか知らなかったという記述があります。佐野さんが質問しないのも悪いですが、それ以前に医者がちゃんと説明していません。頭がツルッパゲになった点滴注射も何の薬なのか知らないのです。佐野さんが「なんの薬ですか?」と質問すると、医者は「佐野さんは延命治療を望んでいないけど、ぼくは佐野さんには長生きしてもらいたい」などといって煙に巻こうとしました。意地悪を言うようですが、患者が長生きすれば薬が売れますからね。医者の言うことを正直に受けとってはいけません。この部分の記述はかなり省略されているのですが、その点滴は抗がん剤で、佐野さんに知らせず医者が勝手にやっていたとしか考えられません。こんなことが許されるのでしょうか? 患者が延命治療を望んでいないことを知りながら、勝手に抗がん剤を点滴するなんて。それに佐野さんが何の薬か知らないと書いていた「ハーセプチン」も抗がん剤の一種なのです。これも勝手に点滴するなんてひどいんじゃありませんか? 副作用もあるのに、説明もしない。患者の人権無視です。

 この本に載っている二つ目のエッセイ「知らなかった」はもっとまえ(1998年)に書かれたものだということなのですが、「もう病院には行きたくない。薬は怖い。医者は信用できない」という言葉が何度もでてきます。なんの説明もないので、はじめ読んだときは、このエッセイも乳がんになって書かれたものと思いましたが、どう考えてもつじつまが合わないので、よくよく読み返してみたら、乳がんになるまえにかかった、数万倍もつらかったという神経症のことのようです。ここでは「もう病院には行きたくない。薬は怖い。医者は信用できない」と何度も書いているのに、乳がんになってからは医者のいいなりになっているのはどういう心境の変化なのでしょうか。何も書かれていないのでわかりませんが、別の病気であっても、一度病院、薬、医者に対する正しい認識―薬は怖い、医者は信用できないというのが正しい認識なのです―を身に付けたのに、それをなぜか覆してしまったのが残念です。

 亡くなった佐野さんを悪く言うつもりはありません。でも医者がひどすぎなのに、自分を守ることができていません。命を救うはずの医者が信用できず、患者が自分で勉強するしかないというのもひどい話ですが、原子力発電所の事故にしても起こるべくして起きたもので、多数派の学者や政府はいままで国民をだましていたのですから、同じことです。この事故で国民も自分の身は自分で守らなければならないということに気づきました。原子力をめぐる利権の構造が「原子力ムラ」と呼ばれるようになりましたが、医療の世界も同じです。薬や検査をめぐる利権の構造があるのです。近藤先生は原発事故のまえに「抗がん剤ワールド」という表現をしています。抗がん剤も儲かるんですね。

 さて、今日は遠くから来てくださったみなさまにお別れを言うつもりででてきました。すぐに死ぬというわけではないかもしれませんが、骨転移がひどくなると外出がむずかしくなると思います。

 私の一生はとても幸せな一生でした。やりたいことをやりたい放題やってきて、何の後悔もありません。多くの友人と交流し、仕事では子どもたちに力をもらい、充実した毎日を過ごしてきました。一昨年、「余命1年」と言われたときに、友人が全国から会いに来てくれ、生前追悼文集もつくりました。それで十分ですので、お葬式はやりません。うちにお焼香にきてくださるのも御遠慮申し上げます。うちでは私も妹も無宗教で、両親の命日にもお線香をあげません。お花も猫がいたずらしてしまうので、御遠慮申し上げます。もちろんお香典も。お金は生きている人のために使いましょう。

 葬式はやりませんが、なにかのときに、社交辞令でも「若すぎた」なんて言わないでくださいね。世界中ではいまも二秒だかに一人の子どもが死んでいます。日本だけを考えれば少し早いかもしれません。でも世界的にみれば60歳近くまで生きたらもう大往生なのです。それから「無念だっただろう」とか「やり残したこと」がどうのとかも言わないでください。そんな気持ちはまったくありませんので。

 そうですね。あと一つやりたいことがあるとすれば、学童クラブの仕事を約30年間してきて、子どもたちのことを思い切り話すことかな。中間まとめの本はだしたのですが、その後の子どもたちのことも話したいです。いま、どんなに子どもたちが大人から迫害されているかを。どなたか興味のあるかたが講演会を企画してくだされば大喜びで話します。1回ではとても終わらないので、連続講座にしましょう。

 骨は砕いて、計画的避難区域になってしまった福島県川俣町山木屋の牧場にまいてもらうように頼んであります。私の心のふるさとである牧場です。ここは牧場主が「花咲き、鳥の鳴くでんでら野」にするつもりだったのですが、汚染されたためにできなくなってしまいました。いずれは開墾するまえの森に戻るだろうということです。

 私のことはすぐに忘れてくださってかまいません。生きているあいだが大事なのです。生きている「たった一人の人」を大事にしてください。「たった一人」からすべてははじまるのです。「たった一人」が世界につながるのです。これが遺言です。今日はどうもありがとうございました。

*****

 通路に座る人がでるほどおおぜいの方が来てくださって、アンケートの内容も「ほめすぎでは?」と思うものばかり(ごめんなさい)。こんな私ですので、ご批判があれば遠慮なくどうぞ!

 と憎まれ口をきいていますが、ほめられるのはいくつになってもうれしいですね。とてもとてもうれしかったです。一番の遠方は三重県からのお客様ではないでしょうか。遠いところ、ありがとうございました。メールもたくさんいただきましたが、これでみなさまへのお礼に代えさせていただきます。ほんとうにありがとうございました。

 レイバーネットに掲載された報告はこちらです

by lumokurago | 2011-12-24 13:21 | がんと闘わない生き方
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