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杉並・教科書裁判 「忌避!」の声飛び交い、突然の結審

6月28日の不当な結審の記事をしみずえいこさんがJANJANに書いてくださいました。

杉並・教科書裁判 「忌避!」の声飛び交い、突然の結審

 2007年6月28日、杉並区の扶桑社版歴史教科書採択における公金の違法支出を訴える裁判の第3回口頭弁論が、東京地裁606法廷で開かれました。

 前回3月の第2回口頭弁論で、原告は争点を10項目以上出し、審理のための最初の材料が出そろったところ。30分の時間がとってある今回は、原告の主張に対する被告の反論、原告の再反論がぶつかり合い、第1ラウンドがやっと始まる、といった段階でした。両者の弁論が火花を散らし、今回以降、第2ラウンド、第3ラウンドと、反論を繰り返しながら、真実が明らかになっていくはずでした。

 ところが、原告側から被告の反論を求める主張や、証人喚問の申請、新たな事実(5月に扶桑社が「新しい歴史教科書をつくる会」と絶縁したこと)の出現などがあったにも関わらず、審理は突如、結審となりました。新しいパンチを次から次に繰り出す原告に対し、被告はジャブを1、2発打っただけ。突然、試合終了のゴングが鳴ったようなものです。

 当然、筆者を含む30名ほどの傍聴者はびっくり、原告はもっとびっくり。ゴング直前に終結を察した原告が、「忌避します!」「待って下さい!」「聞こえませんでした!」などの抗議の声があがる中、裁判官らはところどころ聞き取れない声で終結を告げると、そそくさと退廷していきました。6月1日の安倍裁判の時と全く同じ展開です。

 大門裁判長は、5月に世田谷区の婚外子差別訴訟で原告の不利益を認め住民票を作成するようにとの判決を出し、原告側に実質勝訴の判決をもたらした裁判長。しかし、本件においては、逃げるように身をかがめ、法廷を後にする大門裁判長の後ろ姿に、筆者は失望を隠せません。やっと争点が定まり、これから真実を明らかにしていくべき、このタイミングでの結審は、姑息としか言いようがなく、三権分立とは名ばかり、真実が闇に葬られる瞬間を目の当たりにする思いがしました。

【第3回口頭弁論の詳細】

準備書面、被告は1通、原告は13通を提出

 法廷には、原告8名、被告代理人3名、書記官2名、および傍聴人30名ほど。大門匡裁判長ほか裁判官2名が入廷し席につくと、原告の1人が立ち上がり「大門裁判長は、先日、世田谷区の婚外子差別訴訟で、原告に住民票を出しなさいという判決をお出しになりました。とてもいい判決を出してくださって、私たちも喜んでいます。期待しています」と述べました。大門裁判長は「これはまた別の事件ですので」とかわし、開廷を告げました。原告の女性が「テープの録音を認めてください」と頼みました、裁判長はいつもと同じように「できません」と答えました。

 裁判長は、まず被告である杉並区が原告の主張に対する反論の準備書面を提出していることを告げ「陳述しますね」と述べました。被告代理人は「はい、陳述します」と答えました。次に裁判長は、原告側に書類上の訂正事項の確認をした後「原告からは、今回もたくさん出ています。全部で24番から36番までの13通です」とし、大きく分けると、民訴法の解釈や「つくる会」と扶桑社の絶縁などの新しい主張が5通、残り2通が裁判の進行などに関する意見と整理できるとの簡単な説明があり「後に陳述で扱わせていただきます」と述べました。

 また、原告側に新しく補助参加人が加わって意見書が出されていることが伝えられました。次いで裁判長は、原告と被告の証拠整理を始め、欠番などの番号の確認のほか、原告から9名の証人喚問の申請が出ていることが知らされました。裁判長は、それらの証拠の認否を原告被告に確認し、両者とも認めました。

報告書の評価をネグレクトしても「参考にした」といえるのか

 次に、裁判長が原告に陳述を求めると、原告は口頭で陳述をしたいと述べ「要領よくご説明をお願いします」と述べました。今回補助参加人となった年配の男性が立ち上がり、被告の準備書面に対する反論意見を述べました。被告である杉並区は、「扶桑社の教科書は、教科書調査委員会の報告書において、評価が最も低いものではない」とし、「教科書は単純なプラスマイナスでは評価できない」と主張しており、その根拠は「教育委員は報告書を参考にして独自の判断で採択できる」という採択規則の一点です。この主張に対する反論でした。

 男性は、とつとつとした語り口で、教科書調査委員会の報告書の評価を否定する論議ばかりを展開した杉並区教育委員会は報告書を「参考にした」といえるのか、と問いかけました。報告書は各学校の評価や区民意見及び独自の調査を総合的にまとめたものです。「採択後のNHK『クローズアップ現代』でも報道されたように、学校からの評価において、扶桑社は最も低かった。区民その他の意見でも扶桑社の教科書に対するマイナス評価は非常に多かったにもかかわらず、採択においてはそれが全く受け止められていません。杉並区の適正かつ公正なの採択という基本方針に基づくなら、学校や区民の総合評価である報告書は尊重されなければならなかったはずです。しかし、採択の2回の教育委員会において委員らは、報告書の評価を否定することに審議の大半を費やしています。活かすのではなく、殺すことに終始しているのです。このような審議は、とうてい適正かつ公正な採択とはいえません」と述べました。

版元が責任放棄した教科書を杉並区の中学生は使っている

 次に女性の原告が、最近発表された扶桑社と「つくる会」の絶縁、及び教育委員会の事前協議について陳述しました。扶桑社はこの5月31日、「つくる会」との関係を絶ち、別法人で教科書を制作することを発表しました。扶桑社側が絶縁の理由として「内容があまりに右寄りすぎる」などと述べていることから、女性は「発行元が内容に問題があると認めているような教科書を採択した杉並区の責任」を厳しく糾弾し、裁判長に真実の究明を求めました。また、このような欠陥教科書を採択するために、教育委員会は密かに事前協議を行ったと主張し、証人喚問を要請しました。

杉並区は裁量権があれば何でもできる?

 3番目に陳述した男性の原告は、教育委員会開催時に杉並区が雇った臨時警備が随意契約手続きに違反しているという主張を、被告の反論に対する再反論として陳述しました。「被告ら準備書面による随意契約適法の主張は新たな証拠も無く、裁量というあいまいな論点に終始するのみで、具体的な基準も無く、根拠となるものが提示できていない。裁量権があれば、何でもできるのか。この程度で随意契約ができるならば、税金はどうにでも使われてしまう。襟を正し、納税者国民に顔を向けた裁判長の発奮を促したい。裁判長は、被告らに裁量の具体的な論拠を出すよう指示されたい」と述べました。

 男性は、被告らが反論を裏づける証拠提出をしていないこと、判例をあげていてもその判例を証拠として添付せず、都合のよい解釈を展開していることを挙げ、その怠慢を裁判長に正してほしいと求めました。

突然の終結。裁判官ら「忌避!」の声を背に逃げるように退廷

 原告3名の口頭陳述が終わると、大門裁判長は、原告の方を向き「言いたいことはそれだけですか」と尋ねました。原告は重ねて、被告が出してきた反論は前回の原告側準備書面に対する反論にはなっておらず、証拠もなく、答弁書のレベルの繰り返しにすぎないと述べ、裁判所から被告にもっときちんとした反論を出すように命令してほしいこと、また、進行協議について準備書面を出しているので、この場で取り上げてほしいことを述べました。

 裁判長はまた「言いたいことはそれだけですか」と尋ね、しばしの沈黙の後、原告の一人が「はい」と答えると、裁判長は、「準備書面24~34が本件の主張ですね。35は進行協議についてですが、別の機会に対応します。36は弁論調書への異議申し立てです。被告は、さらに主張・立証の意向はありますか」と今度は、被告のほうを向きました。被告代理人は、「これ以上、主張・立証はありません。本件の速やかな結審を求めます」と答えました。

 つづいて裁判長は、書類に目を落とすと、ところどころ聞き取れない声で「では、本件は……これをもちまして……終結とし、……判決を8月……」と言うと、席を立つではありませんか。「これをもちまして」のあたりから、原告側から「ちょっと待って下さい!」「忌避します!」「聞こえません!」などの声が上がりました。

 身をかがめ逃げるように退廷する裁判官の背中に向かって「忌避!」「忌避です!」の声が飛び交い、原告は総立ちになり、「どういうことですか!」「まだ、何も審理してないじゃないか!」「悪意に満ちています!」など怒りの声が上がり、泣き出す原告もいました。被告側は、そんな騒ぎをよそにそそくさと席を立ち帰り支度を始めます。原告側からは「あなたたちは恥ずかしくないんですか!」「真実を明らかにしてください!」「子供たちの命がかかってるんですよ!」の声が飛びました。「終結を求めます」と言った被告代理人は、なぜか赤い顔をして、歪んだ面持ちで退廷していきました。

忌避が先か、終結が先かの水掛け論。録音してさえいれば

 法廷には書記官が残っていましたが、原告側が、「忌避の申立は終結前だから、その扱いになりますよね」と念押ししたところ、書記官が「いえ、終結後です」と言ったので、また事態は紛糾。忌避の申立が終結の前か後かで押し問答が始まりました。裁判では録音が禁じられ、書記官は速記もしていません。原告と傍聴者から「だから録音していないと、こういう時に困るじゃないか!」と、さらなる怒りの声が上がり、筆者も「ごもっとも」と思いました。

 先日の安倍裁判の時と同じことが起こりつつありました。原告らは傍聴席に座り、書記官との水掛け論争を続けました。傍聴人の1人が「忌避の申立は、終結の前でした。私たちが聞いていたのだから証人になります」と申し出、署名が集められました。

またもや強制退去?!粘る原告の思いは届くのか

 そのうち腕章をつけた裁判所の職員が二人やってきて、「退廷してください」と言いに来ました。また強制退去になるのか、と筆者は固唾を飲んでいましたが、前回より穏やかなムードが漂い、書記官・職員対原告・傍聴人の話し合いが続きました。

 ある原告は、自分は自分のためにこの裁判をやったのではない、裁判所職員の子どもたち、孫たちを含む子どもたちのためにやったのだ、それなのにこの対応はひどすぎると訴えました。若い書記官に対して、あなたにも良心があるだろうから、弁論調書にはありのままを書いてほしいと頼む者もいました。しかし書記官は固い表情で自分にはその権限がないと答えました。また「裁判とは関係なく、せっかく知り合ったのだから言いたい」として、憲法を改正し戦争のできる国になろうとしているこの状態をどう思っているのか、あなたやあなたの子どもが戦争に行くことになるのだと話しかける原告もいました。みんなが一生懸命に裁判所職員に訴えました。しかし、職員は一切聞く耳を持ちませんでした。

 1時間以上が経過し、1時15分になると、次の法廷になりました。大門裁判長らが入廷した途端、傍聴席から一人の女性が「忌避します!」と叫びました。その法廷は全く別の訴訟の判決申し渡しだったので、その訴訟の原告と被告はびっくりしたと思いますが、顔には表れていませんでした。開廷してからは、傍聴席は沈黙していましたが、裁判官らが退廷する時、また傍聴席から「忌避します!」「裁判は終わってません!」「教科書から戦争になっていくんですよ!」「あなたたちは戦争犯罪人だ!」などの声があがりました。

 それら悲痛な叫びには振り向きもせず、裁判官らは冷然と退廷していきました。陪席が空っぽになると、原告らはしばらく茫然としていましたが、力なく立ち上がり、法廷を後にしました。

裁判の後で

 裁判の後、傍聴人の1人は「人事権を握られた操り人形を相手に、法廷芝居を演じているような非現実感を覚えた」と感想を述べていました。また原告からは「裁判長の問いに、被告代理人が『結審を求めます』と答える。その『あうん』の呼吸をきっかけに、『それでは終結します』と来たわけです。初めから明らかに決めていた進行でしょう」という意見や、「住民訴訟ですから、具体的な証拠もあるわけで、貧弱な被告の主張、証拠で被告を勝たせる判決理由をどうするんでしょうね」といった話が出ていました。

 税金の使い方をめぐる今回の訴訟。随意契約の違法性などかなり具体的な事項が争点になっていただけに、司法側の消極的な姿勢は、問題が多いように感じます。官製談合や公金支出の不透明がメディアをにぎわす今こそ、こうした裁判を通じて、徹底して審理を尽くし、官に襟を正させる役割が、司法にはあるのではないでしょうか。裁判官は、法の番人といわれます。彼らが果たして何の番人になっているのか、筆者の目には黒の法衣が揺らぎ、もはやかすんで見えてくるのでした。

(しみずえいこ)

by lumokurago | 2007-07-07 19:49 | 杉並教科書裁判
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