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雨宮処凛×堤未果 対談

昨日の続きです。休憩の後、雨宮処凛さんの映画「新しい神様」の予告編を見てから雨宮さんと堤さんの対談が始まりました。長いけどとても元気になれるので最後までぜひどうぞ。(写真撮影は禁止だったんだけど、こっそり撮ったかわいい二人の写真があるんだけどなあ。載せていいものかどうか??)。

堤(以下T):この映画は気になっていて、見たいなと思っていました。一気に左に行ったの?

雨宮(以下A):ラストシーンで右翼はやめてる。

T:そんなに簡単にやめられるの?

A:いい団体だったから。右傾化の最前線で若い人がたくさんいた。元オウムの信者も。「こっちの世界にはまともな命の使い道がない」と浮遊している時に、出会ったの。

T:9.11の後、キリスト教に入る人がすごく増えた。「モラル・よきアメリカを取り戻そう」と共和党に投票するの。貧しい人々は国も会社も助けてくれないから絶対受け入れてくれる神様が必要なんだね。この映画のタイトルの意味は?




A:タイトルは監督がつけたんだけど・・・天皇、不安定な、幻の天皇。神様は天皇だったけど、毎日一人でビデオカメラを撮って自問自答してたから、「新しい神様」はビデオカメラになっちゃった。

T:右翼をやめた直接の理由は?

A:生きづらさを思想に依存してたんだね。最初左翼に行ったけど、わからなかった。生きづらい社会を変えたくて右翼に入った。入ると右翼の考えを受け入れなければならなかったけど、98年に出た『戦争論』におかしいんじゃないかと思った。99年には国旗国歌法、周辺事態法などが通り、自分たち(筆者注:右翼)の求めている世界が国をあげてほんとに来るなんておかしいと思った。

T:それで右から左に変わった?

A:根本は同じ。アンチ資本主義・経済至上主義。『アメリカ弱者革命』はおもしろかった。男の子がイラク戦争で死んでも125万しか出ないって本当なの?

T:そう。でも兵士はお金が出るけど、派遣(でイラクに行く)はもっと悲惨。

A:1円も出ない?

T:出ない。労災も出ない。軍事訓練もせずに無差別攻撃の戦場に行くの。

A:究極の使い捨てだね。偽装請負で2人死んだ。過労自殺だった。一人は23歳、ニコンで過重労働で裁判やってる。1年後、26歳が心臓発作で亡くなって、会社からは埋葬料のたった10万円しか出なかった。人の命がこんなに安いなんてひどい。

T:派遣は過重労働とひどい環境。米兵の残飯を食べ、靴も履けない人間以下の扱い。水も兵士は1週間に1リットルのエビアンが1本だけで、派遣は放射能に汚染された生水。

A:イラクには2回行った。1回目は右翼のバンドで日本代表として行った。40ヶ国が集まってた。テレビでサダム見て喜んで、大統領宮殿に行って息子に会った。写真もあるよ。息子はその後死んだけど。いろんなテロリストとあって、イラク人側の話を聞いた。

T:9.11を見た時はどう思った?

A:ゴジラかと思った。ほんとだと思わなかった。その後、テレビによる現実感のなさを考えつづけた。

T:アメリカでは湯浅誠さん(もやい)のいう「貧困ビジネス」の国家レベルのものがイラク戦争。「9条を守ろう」と言ったら(軍の)リクルートしてる人は鼻で笑った。9条があってもなくても戦争はできる。25条を奪ったら戦争に行く人が増える。若い人に戦争といってもピンとこないけど、25条の話をしたらわかる。

A:日本も同じ。生存権が脅かされて、赤木さんだけじゃなく、40代でも「戦争が起こってほしい」という人がいる。赤木さんは戦争で死ねば恩給が出るという。「親が死んだら自殺してます」「2週間何も食べなかった」という人がいる。母が死に、父に捨てられて中卒で働いてトラブルを起こして辞めたら、仕事と住む所を失って30代でそのままホームレスになって水だけでウロウロしてる、っていう人が本当にいる。国内の戦場に閉じ込められている人抜きに9条は語れない。そこに閉じ込められたままの平和はいらない。

T:9条を守る運動の中心は年配者。「戦争するから貧しくなる」という認識しかない。世界の構造は変わり、貧困を作り出すことで戦争ができる。

A:戦争に行かなくてもホームレスか刑務所か・・・

T:戦死か路上死か過労死・・・

A:正社員なら過労死。本田由紀さんが「ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか」って言ったけどその通り。イラクに行った2回目は人間の盾で行った。イラクに行くと必ず人が死んだりする。その間に友だちがネット心中してた。イラクでは戦死、日本では自殺。「どっちがおかしいか」って言ってた。イラクで死んだ民間人の死者よりも日本の自殺者の方が倍くらい多い。私の周りで約10人死んでる。日本で自殺する人の命も軽く扱われている。

T:ニューヨークの男の子の友だちがイラクに行った。この子は日本人だけど生活のために行き、人を殺させられた。帰ってきたらいきなり平和運動の人に「なんで9条を持っている日本人なのに米軍に入ってイラクへ行ったのか? 恥ずかしくないのか?」と言われた。その人には「9条を持ってる」と言っても時代がかわったことがわかっていない。その友だちはまたイラクへ行くと言っている。9条を飛び越えて25条が切実なのだ。

A:赤木さんは栃木県で7年間夜勤の仕事をして、31歳だが、その間に給料が50円しか上がっていない。「日本は若者を見殺しにする国だ」と言っていた。10年位左派だったが、「9条守ろう」には自分を救う言説がない、戦争で人が死ねば社会は流動化すると言っている。社会の中で「もつ者」が貧困層にやさしさを持ってくれればと思う。すべての人がしあわせになるためにと考えている。

司会者:「お前はそこまで落ちてないだろ」「甘いぞ」というおじさんに世代のギャップを感じます。

A:オヤジは生存権に鈍感なんだ。

T:わかんないおじさんたちは「1億総中流」の時代からスイッチできてない。アメリカでは軍の3カ月の訓練で自尊心を壊す。名前で呼ばずに「おい」とか数字で呼び、意味のない腕立て伏せを廊下でさせるとか・・・そしてファシズムに走る子が多い。

司会者:そういう子たちが社会的承認をどうやって得ていくかが問題ですね。

A:ネットうよくの人がデモに来る。一緒にやっていくのは大変だけど、貧困層だから一緒にできる。

T:アメリカでは貧困層がインターネットで連携している。

A:今日、労組の人がいっぱい来てる。私は去年の4月30日からプレカリアートの運動に関わってる。それまでは自殺とか心の問題としてやってた。「なんで死ななくちゃいけないの?」と思っていたけど、それは「構造」の問題だった。自分もロストジェネレーションで、社会に出ても食えなくて、100社落ちた。フリーターでも即日解雇とかくらってリストカットを繰り返した。日本は普通に働いて生きていくことがむずかしくなった。新自由主義の流れの中で、日経連が労働者を3つに分け、使い捨てている。去年の4月30日にみんなで「生きさせろ!」「月に12万じゃ生きていけない」とささやかな生存権デモをした。そこで3人が逮捕されてびっくり! フリーターは大変だし、正社員は過労死、私の弟も大変。若者が「生きさせろ!」と言ったら逮捕。イラク人が「飯よこせ。住むとこよこせ」と言えば射殺されるが日本も同じ。あれから個人加入の労組が増え始めて、当事者がガンガン反撃し始めた。今まではつらい人は死んでた。連帯してもネット心中だった。やっと反撃が始まった。

T:アメリカではネットで情報を伝えて、国防省のプログラムをやめさせた例もある。そのプログラムは表向きは高校の中の落ちこぼれを救うということだが、教科書は武器の作り方とか、砂漠で生き残る方法とかで、最後は武力で解決するというコンセプト。実際に武器を使った訓練もやっている。このプログラムを受けた子どもは7~8割が入隊する。一人の少年が「なんかおかしい」と全米にネットで流した。何が起きているかを知ることで「やめた」という子どもが増え、プログラム自体成り立たなくなって閉鎖された。「無理と思ったが世の中を動かすことができたんだ」と感動した。

A:ネットで「民主主義にはデモもある」と流している。反貧困ネットワーク「もやい」にいろんなジャンル入り乱れて大同団結した。なんで連携できたかというと、そこまでひどくなったということだと思う。院内集会で政策要求を出した。組合が居場所っぽくなって、ひろがっていきおもしろい。

T:「もやい」の湯浅さんは「格差」という言葉が隠れ蓑になると言っている。取り組まなくてはならないのは「格差」ではなく「貧困」。アメリカでも同じこと。戦争反対と労働者問題は根っこは同じで一緒にデモしている。

A:敵は自分たちの無関心だと思う。無関心無知に打ち勝つことが大事。12月1日の集会の「生きのびる」はとてもシンプルな要求。戦争と今の労働状況とがつながっている。

T:アメリカでは地元の政治家を育てていくという流れも出てきている。ブッシュは貧困児童の医療費請求に拒否権を作った。ニューヨーク州知事は合衆国相手に訴訟を起こそうとしている。心ある政治家に声を届けることも大事だ。

A:私の出身地は北海道の滝川で自衛隊の駐屯地がある。滝川では自衛隊か警察に入るしか働き続けられない。イラク戦争で死んだら1憶もらえる。自分の町そのものが搾取されている。高遠さんが「高校生を自衛隊に来させて(筆者注:ちょっと不明)『かわいい!』みたいに思わせて、すぐ入っちゃう」と言ってた。女の人が入る確率が高い。

T:貧しくて男尊女卑だけど、軍では同等だからね。自分でお金を稼げて英雄になれると思っちゃう。イラクに行った自衛隊員が16人自殺してる。アメリカの兵士は「すごく不思議だ」って言ってる。「イラクに非戦闘地帯なんてないよ」と。兵士は心が壊されて人を殺し、戦地に行ってまた心を壊される。派遣社員もそれと同じだ。日本とアメリカはすごく違うけど、若者同士同じだからネットでつながれないかと思う。

質疑応答

Q:他国が攻めてきたら?

T:その質問は、9.11直後のアメリカ国民が感じたことそのもの。改憲論は、せめてきたときどうするという不安と国際貢献をしなければならないという二つのことから成り立っている。でも、アメリカはイラクを守れていない。平和も外交で作っていくようにしようというリーダーが増えている。9条を世界で一つのコンセンサスにしてしまおうと、日本がリーダーシップをとることが求められている。こういう情報を広めていくこともやれることの一つだと思う。

A:この問題はむずかしい。ものすごい貧乏な国になれば誰も攻めてこないっていうのもありかなと思う。9条を守るのはむずかしい。私は9条とものすごくいい出会いをした。右翼に入った時は「押し付け憲法反対」と言っていた。右翼・左翼でディベートする練習があって、その時初めて憲法を読んだ。前文を読んで感動した。でも憲法を読むのは不眠症の時。いい眠りをくれるから・・・
4月30日にデモに行って、9条は25条の問題に直結していると感じた。武器にできるものは憲法しかなかった。憲法は本当に必要だと思う。

Q:貧困のことを考えると言っても、今の便利さに甘んじている自分がいるのですが・・・

A:書かないで下さいね! 「貧困ビジネス」って言われるんです。でも印税は運動に使います。洋服も買っちゃうけど・・・(筆者注:カリンちゃんてほんとにいい子だね)

T:メールなどもやるので困っちゃうんだけど、一回事実を知って知る前には戻れないと思う。そうは言っても、便利な生活を手放したくない人もいる。それで議論になってた。今すぐ手放して農作業でもないし・・・
スターバックスはエチオピアで農民を搾取している。それを知っててスターバックスで飲むのをやめられないのはおかしい。大資本の力は強いと思いがちだが、不買運動をしてスターバックスに影響を与えることをやった牧師がいる。スターバックスはエチオピア政府との交渉で妥協し、エチオピアには8000万ドルのお金がはいるようになった。受身の消費でなく、「選択する市民」になろう。「たくさん買わなくちゃ」、「とにかく消費」ではなく、プレゼント買うんだったら、子どもと過ごす時間を持つ。何が起きているかを知れば変わっていく。

A:ろくな企業がない。キャノンがひどいと知ってエプソンに変えたが、エプソンはもっとひどかった。マクドナルド、紳士服のコナカ・・・、液晶テレビはブラジル人、日本人フリーターの血と汗と涙だし・・・。買うものがなくなっちゃう!

Q:ロストジェネレーションと下の世代との意識のずれは?

A:10年間で破壊されつくしている。正社員でも仕事が増えてる。20代の正規雇用率は50%。下の世代に対する「自分たちはまだまし」という罠だ。

Q:声が出せない野犬たちはどうしたらいい_?
A:声が出せない人たちは自殺したり、リストカットしたり、ひきこもったり・・・。自分ではなく外に原因を見つけて運動を始めて元気になった人がたくさんいる。運動しない権利もあるけど、声を上げたいなら、ネットとかここに来るとか・・・

T:怒る力もなくなってる人がいる。そういう人の存在を余力がある人が伝える。死なないように情報を流す。フレームワーク(枠組み)も含めて双方向で変えていく。

Q:堤さんはエリートで9.11で気づいたが、みんなにどうやって気づかせる?

T:そう言われることは多い。でも証券会社を辞めた人は多い。志はあるがお金は悪いものと思っている人が多い。お金は手段だと思う。お金で回ってるんだから逆手に使ったらどう? 本当のことを知ってしまうと元に戻ることはできない。前の私のような、余力のない人たちが多い。若い人と9条を守る運動をしている人は切れている。30代がつながなくちゃいけないんだけど、30代は過労死コースからうつになってる。それでも私は伝えていく。私の武器は書くこと。書いて種をまく。一人でやってると無力感に襲われるけど、これはみんな持ってる悩みだと思う。日本中にもアメリカにもそういう人がいる。敵は体制ではなくて、あきらめ、敗北感だと思う。すぐに結果が出なくても、とりあえず種をまいておこうと細々とやっている。

by lumokurago | 2007-11-29 23:25 | 社会(society)
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